
水の惑星・地球。しかし、その表面は完全に海に覆われているわけではない。ところどころ大陸や島が海中から顔を覗かせ、地球の風景に多様性を与えている。陸地は、現在を生きる私たちにとっては当たり前の存在である。
だが、地球上にいつ、どのようにして大陸が誕生したのかはいまだよくわかってはいない。大陸の成り立ち、そして火星や金星の大陸の有無について、『大陸の誕生』(講談社)を上梓した田村芳彦氏(国立研究開発法人海洋研究開発機構・上席研究員)に話を聞いた。(聞き手:関瑶子、ライター&ビデオクリエイター)
──地球の誕生は46億年前と言われています。誕生直後の地球にも、海や大陸は存在していたのでしょうか。
田村芳彦氏(以下、田村):誕生した直後の地球表面は、マグマオーシャンと呼ばれるマグマの海に覆われていました。海も大陸もありません。
マグマオーシャンが冷え固まるのに、500万年から1000万年程度かかったと言われています。途方もなく長い期間に感じるかもしれませんが、地質学的にはそれほど長い時間ではありません。
マグマオーシャンが固まると地球の気温は下がり、大気中の水蒸気が水滴になって何万年も雨として降り注ぎました。こうして45億年ほど前に、地球に海ができました。
一方、大陸がいつできたのかは、はっきりとわかっていません。現時点で発見されている最古の岩石は、約40億年前にできた片麻岩という岩石です。これはカナダで発見されたものですが、大陸を形成していた岩石であると考えられています。
できてしまった大陸は、二度とプレートの下に沈み込むことはできません(*)。つまり、大陸が一度できると、その大陸がなくなることはないということです。
*大陸プレートは軽い(密度が比較的小さい)ため、海洋プレートと衝突した場合は、重たい海洋プレートが大陸プレートの下に沈み込む。また、大陸プレート同士が衝突した場合は、ヒマラヤのような大山脈を形成する。
そう考えると、大陸を形成していた40億年前の片麻岩が発見されたという事実は、少なくとも40億年前には地球上に大陸が存在していたことを示しています。
──地球と地球以外の太陽系の惑星の岩石学的な違いについて教えてください。
田村:火星や金星の表面を覆っている岩石は、地球と非常に似ている部分もありますが、はっきりと異なってもいます。
火星や金星の表面の岩石は、すべて玄武岩と呼ばれるものです。
地球では、玄武岩は海洋地殻を構成する岩石です。つまり、地球の海底には玄武岩が敷き詰められています。そして玄武岩の他に、大陸地殻を構成する安山岩が存在している。ここが、地球と火星、金星の岩石の大きな違いです。