光は波か粒子かという疑問から量子力学が生まれた(写真:jpimage/イメージマート)光は波か粒子かという疑問から量子力学が生まれた(写真:jpimage/イメージマート)

 インタビューの前編「物理学者・野村泰紀氏が語る物理学超入門、ニュートンの有名な言葉「リンゴも月も地球に落ちてきている」はどんな意味?」では、主にニュートン力学とアインシュタインの相対性理論について野村泰紀氏(カリフォルニア大学バークレー校教授)に話を聞いた。

 もちろん、相対性理論以降も物理学には大きな発展があった。量子力学である。量子力学はいかにして発展していったのか、誰がどのような説を唱え、それがどれほどのインパクトを与えたのか。『なぜ重力は存在するのか 世界の「解像度」を上げる物理学超入門』(マガジンハウス)を上梓した野村氏に、引き続き話を聞いた。(聞き手:関瑶子、ライター&ビデオクリエイター)

◎前編「物理学者・野村泰紀氏が語る物理学超入門、ニュートンの有名な言葉「リンゴも月も地球に落ちてきている」はどんな意味?

──量子力学がどのように発展していったのか、改めて教えてください。

野村泰紀氏(以下、野村):量子力学は「光は波か粒子か」という議論が原点となっています。

 ニュートンが「光の粒子説」を唱えたこともあり、一時期は粒子説が広く支持されていました。けれども、17世紀末にオランダの物理学者クリスティアーン・ホイヘンスが「光は波である」という仮説を立てて以降、その説を補強するような観測が多くなされてきました。

 有名なものとして、19世紀初頭に英国の物理学者トマス・ヤングが行った二重スリットの実験が挙げられます。

 この実験では、まず2枚のスリットと1枚のスクリーンを準備します。1枚目のスリットには1つの穴が、2枚目のスリットには2つの穴が開いています。2枚目のスリットの後ろにスクリーンを設置します。

 1枚目のスリットの後ろから光を当てると、光は1枚目のスリットの穴、2枚目のスリットの穴を通過してスクリーンに到達します。このとき、スクリーンには明るいところと暗いところが交互に現れます。

ダブルスリット実験出所:『なぜ重力は存在するのか』(著・野村泰紀、マガジンハウス)

 なぜこのようなことが起こるのかと言うと「光が波の性質を持っているから」にほかなりません。2枚目のスリットの穴aを通過した光の波長の山と谷、穴bを通過した光の波長の山と谷が干渉したためです。

 山と山、谷と谷が重なるところは光が増幅されて明るくなりますが、山と谷が重なるところは光の強度がキャンセルされるため、暗くなります。

 ヤングの実験は、「光は波である」という説をより強固にするものとして注目を集めました。

 ここで「光が波である」という説を有力なものとする、もう一つの理論を紹介します。英国の物理学者ジェームズ・マクスウェルが見つけた電磁気学の理論です。