筑駒の生徒は、例年、4割を超える生徒が現役で東京大学に合格する(写真:GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート)筑駒の生徒は、例年、4割を超える生徒が現役で東京大学に合格する(写真:GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート)

 筑波大学附属駒場中学校・高等学校、通称・筑駒(つくこま)。例年、4割を超える生徒が現役で東京大学に合格する、天才秀才集団である。

 筑駒は異例ずくめの学校である。開成、麻布、武蔵といった私立進学校とは異なり、国立大の附属校であること。国立大附属校で、唯一の男子校であること。制服も、校則もないこと。

 そんな学校が、なぜ東大への登竜門的な進学校となり得たのか。どんな授業で、生徒の能力を伸ばしているのか──。『筑駒の研究』(河出書房新社)を上梓した、教育ジャーナリストの小林哲夫氏に、話を聞いた。(聞き手:関瑶子、ライター&ビデオクリエイター)

──毎年、多くの東大合格者を輩出する筑駒ですが、筑駒から東大に進学する生徒はどのような動機で東大を目指すのでしょうか。

小林哲夫氏(以下、小林):人それぞれだとは思います。

 研究者や弁護士、医師のような将来目指すべき職業がある生徒の場合、自分のレベルに見合った大学に行こうとなると、やはり東大を目指すことになります。もともと頭の良い生徒たちですから、そうなることは自然な流れです。

 その一方で、「周囲が東大を目指しているから自分も受けてみよう」という生徒が、一定の割合でいることも確かです。筑駒では、東大に行くことが半ば当たり前のようになっている風潮があります。

 なので、東大にこんな面白い先生がいる、東大に行けばこういう素晴らしい研究ができるという生徒は、少数派だと思います。

──筑駒の伝統的な校風「自由闊達」とは、どのようなものなのでしょうか。

小林:筑駒には、校則らしいルールはありません。書籍でも紹介しましたが、卒業生の中には「校則がなく『ガムを噛んではいけない』『上履きを履きなさい』の2つしか言われなかった」と回想する人もいるほどです。

 筑駒の生徒たちは、ルールのない世界で、どのように学校生活を過ごすのかということを12歳から自分で考えることを求められます。自由を与える、その代わりに、自ら考え、自らが良かれと思ったことをやりなさいということです。

──麻布中学・麻布高等学校も自由闊達な校風の進学校で、なおかつ男子校です。筑駒と麻布には、どのような違いがあるのでしょうか。

小林:筑駒と麻布では、生徒の気質にそれほど大きな違いはありません。むしろ、開成と比較するほうが違いが際立って面白いかもしれません。

 中学受験の志望校決めで重要な役割を果たすのが文化祭です。開成の文化祭では、きちっと制服を着た生徒たちの姿を見ることができます。一方、麻布や筑駒に行くと、金髪の子もいれば、派手な服装をした子もいる。

 金髪にアロハシャツを着たお兄さんたちを見て、不良っぽくて嫌だなと感じる小学生もいます。そういう子たちは開成を第一志望校にします。一方で、麻布や筑駒の雰囲気を「面白そうだ」と感じた小学生は、筑駒や麻布を受ける。

 開成と筑駒・麻布の関係は、女子校で言うと桜蔭と女子学院の関係とよく似ています。真面目で面倒見の良い桜蔭と、自由な女子学院。

 ですので、筑駒と麻布の違いというよりも、筑駒と開成の違いでいうと、入ってくる生徒の気質がそもそも違います。勉強ができることは共通していますが、自由を謳歌したい子は筑駒、きちっとした学校生活を送りたい子は開成。そこが決定的な違いだと思います。

──書籍中では、筑駒のユニークな授業が紹介されていました。