男女共学化のメリット・デメリット
──ここ10年では、都立の中高一貫校ができ、中学受験で人気を集めています。都立中高一貫校の人気の高まりを、筑駒はどのように見ているのでしょうか。
小林:意識していないと思います。
筑駒も、かつては他の私立進学校に対して、多少なりともライバル意識のようなものを抱いてはいたようです。ただ、今現在、筑駒は名実ともに国内トップクラスの頭脳が集まる学校という地位を確立しています。その地位は、都立中高一貫校が出てきて、揺らぐような軟弱なものではありません。
今、少し分が悪い立ち位置にあるのは開成かもしれません。開成は御三家の中で唯一高校からの募集を行っています。最近では、高校受験で開成と日比谷に受かった場合、日比谷に進学する生徒もいるようです。開成はそれに危機感を抱いています。日比谷と開成は現時点でライバル関係にあるようです。
筑駒は、進学実績や他の進学校との競争よりも、昨今の少子化や多様化にいかに対応するかという点に重きを置いています。
書籍の最後に、筑駒の現在の校長である北村豊氏のコメントを入れました。北村氏は、ハンディキャップを持つ子どもの受け入れや共学を視野に入れ、多様性に対応できる学校でなければ、今後生き残ることは難しいと話していました。
──筑駒を男女共学化する際のメリット、デメリットとして、どのようなことがあるのでしょうか。
小林:デメリットはコストです。男女共学化を実現するにあたって、女子トイレを作る、女子更衣室を作る、また、女性教員を配置するなど、女性を受け入れるためのハード面とソフト面を整えなければなりません。それには相当な予算が必要です。
国立大学附属校の予算では無理があります。筑駒の男女共学化は、筑波大学がどれだけお金を出すか、という点にかかっています。
──筑駒の男女共学化は、現実的ではないということでしょうか。
小林:そうとは言い切れません。筑波大学と筑駒の間では、どうやらそういう話し合いは、既に始まっているようです。
──では、筑駒を男女共学化するメリットについては、いかがでしょうか。
小林:優秀な子が、今まで以上に集まるのではないかという期待はできます。男女共学化により、進学実績が下がるのではないかという見方も一部にはあります。ただ、たとえ下がったとしても筑駒は気にはしないでしょう。逆に僕は、進学実績が上がるのではないかと思います。
──筑駒が女子の受け入れを始めた場合、桜蔭などの女子校はどのような反応をするのでしょうか。
小林:多少、慌てはするでしょう。ただ、女子校文化を良しとする層は一定の割合で存在します。筑駒に対抗するため、学校の方針を変えようとまではならないでしょう。
──書籍の中では、筑駒の人は群れない、リーダーが少ないということにも言及していました。