「退職」に対するネガティブな印象が変わりつつある「退職」に対するネガティブな印象が変わりつつある(写真:beauty-box/Shutterstock.com)

川上 敬太郎:ワークスタイル研究家)

なぜアメリカでは「リベンジ退職」が一大トレンドになっているのか

 アメリカのトランプ大統領は、再選されるとすぐ連邦政府の職員に早期退職勧奨を行いました。対象には、映画によく登場するCIA(中央情報局)も含まれています。そんな強権発動の一方、アメリカの職場では「リベンジ(revenge:報復)退職」が一大トレンドになっていると伝えられています。

 リベンジ退職とは、職場に対する不満が引き金となり反発する意思を示すなど、報復心を持って辞める行為を指すとされます。Forbes JAPANが報じたところによると、グーグルで“リベンジ退職”と検索される頻度が急増しているとのこと。

 その背景として、2025年の労働市場が活性化して転職しやすくなるという読みが働き手の間で働いているとする指摘があります。

 労働政策研究・研修機構によると、アメリカの雇用者数はコロナ禍前の水準を超えて、2020年以降コンスタントに増加基調です。また、アメリカ労働省が発表した今年1月の速報値も14万3000人増。前月比で伸びは鈍化しているものの、着実に雇用が増えている様子がうかがえます。

増加基調にあるアメリカの雇用者数増加基調にあるアメリカの雇用者数(写真:AP/アフロ)

 労働市場が転職しやすい状況であれば、働き手にとっては追い風です。トランプ大統領が大ナタを振るっている陰で、アメリカではリベンジ退職の流れがさらに強まっていくのかもしれません。では翻って、日本ではリベンジ退職は増えていくのでしょうか。

 リベンジ退職の引き金となる不満は、長時間労働や業務過多、それらから生じる燃え尽き、不当評価、劣悪な就業環境など種類はさまざまです。不満に耐え続けているうちに職場に対する気持ちが離れていき、反発心は強まり、怒りの感情に任せて退職してしまいます。必要最低限の仕事だけこなしながら、心の中では職場に対して距離を置く静かな退職(Quiet Quitting)とはある意味対極をなすスタンスとも言えます。