求人募集は「転勤がないこと」がアピールポイントに
時に、人生の大きなターニングポイントになることさえある転勤。中には転勤命令を前向きに受け止める人もいるかもしれませんが、「転勤はイヤだ」「転勤の辞令で辞める人もいる」など、世の中には転勤をネガティブに受け止める声が溢れています。
そんな働き手の意識に会社側も敏感になっているようです。
Indeed Japanの調査によると、求人検索エンジン「Indeed」上で2018年1月~2023年4月の間に「転勤なし」に言及した正社員求人の動向を調査したところ、5年で3倍にも増えていたとのこと。求人募集の際、転勤がないことが求職者に対するアピールポイントの一つとして認識されていることがうかがえます。
しかしながら、かつて会社からの転勤命令は抗いようのない試練でした。いわゆる総合職として入社する際には転勤を受け入れる覚悟も込みであり、そこに異を唱えない姿勢が会社への忠誠心として求められている面がありました。
1989年に発売されたロックバンド、ユニコーンの代表曲『大迷惑』では悲哀を込めて、会社員に下された転勤命令を“悪魔のプレゼント”と表現しています。
その様相が徐々に変わりつつあり、転勤なしを求人でうたうほど柔軟な姿勢がみられるようになってきている背景には、少なくとも3つの環境変化があります。
まず、家庭環境の変化。いまや、世帯の3分の2は共働きです。専業主婦世帯は年々減少傾向にあり、それに伴って、以前と比較すると徐々に家事や育児といった家周りの仕事も夫婦で協力して取り組むようになってきています。
専業主婦世帯でも転勤命令が出て夫が単身赴任になれば、妻は家周りの仕事をワンオペでこなさなければなりません。さらに兼業主婦世帯だと、夫が単身赴任すれば残った妻は仕事もこなしながらワンオペで家庭も支えることになります。だからといって夫とともに転居すれば、妻は転居先で就職活動しなければなりません。