異文化理解のために英語圏以外の国で研修を行う私学が増えている(写真はイメージ、milatas/Shutterstock.com)

 私立中学・高校の海外研修と言えば、主に英語力の向上を目的としてアメリカ、オーストラリア、ニュージーランド、カナダなど英語圏の国に出かけることが定番だった。しかし、近年は東南アジアの発展途上国、遠くはアフリカ、バルト海沿岸で実施する学校が出現している。その目的とは何なのか──。安田教育研究所代表の安田理氏がレポートする。(JBpress編集部)

中高生が将来活躍する舞台は先進国ではなく発展途上国

 いま「トランプ関税」により世界経済が打撃を受けている。いずれわれわれの生活にも大きな影響がもたらされるだろう。

 国内にいても、いろいろなことが国境に関係なくダイレクトにもたらされる。スーパーでは米価格の高騰により輸入米が増え、オレンジ類も価格が高くなりトルコ産などが並んでいる。日常生活では、分からないことがあればGoogleで検索し、Amazonで買い物をし、FacebookやXで人間関係がつながっている。アメリカのIT企業のシステムを抜きにしてわれわれの生活は成り立たない。

 先の見えないVUCA(変動性、不確実性、複雑性、曖昧性)の時代に必要なのは、これまで以上にデジタル化やグローバル化に適応し、それを生かす力を身につけることだ。

 下記の表は2024年と2050年(予測)の世界のGDP(国内総生産)ランキングを示したもの。

 GDPはどうしても人口が多い国が高くなるが、2050年の予測を見るとトップはアメリカではない。これからは先進国の衰退、発展途上国の興隆が避けられないだろう。それは中高生が将来主として活躍する舞台が現在発展途上の過程にある国々になるということを意味する。

 実は私学の中にはそこまで先を読んで新しいグローバル教育の取り組みを行っている学校がある。海外研修先の多様化はそのひとつだ。