英語圏も「語学研修」から「サイエンス」へ

 ここまで紹介してきた学校の海外研修先は新しい動きで、実際はまだオーストラリア、ニュージーランド、カナダなど英語圏の国に行く学校が多いことに変わりない。ただ中身が単なる「語学研修」にとどまらなくなっているのが最近の傾向だ。

 つい最近の例を紹介しよう。3月20日、青山学院横浜英和(神奈川県横浜市)の中1生たちが出かけたのは、カナダのトロント。オンタリオ工科大学の学生たちとサイエンス、テクノロジーのプログラムを行った。

 英語でロボティクスの説明を聞き、実際にロボット自動車を作って、最後に大会も開催。小さいころからレゴに親しんできた生徒たちは、感覚を頼りにどんどんロボットを作ったそうである。

 最近はこうしたサイエンス系の海外研修も増えている。ドルトン東京学園(東京都調布市)の「シリコンバレー研修」では、スタンフォード大学やカリフォルニア大学バークレー校といったトップクラスの大学やGoogle、NetflixといったIT企業を訪問する。

 今回見てきたように、「海外研修」は驚くほど進化している。このほか、実施はまだだが北欧(エストニアとフィンランド)での研修を計画している実践女子学園(東京都渋谷区)のようなケースもある。

 英語圏の国々に語学研修で出かけても、普段自分たちが送っている生活とそれほど大差なく、生徒には大きな刺激にならない。また、近年はオンライン英会話などで語学力を身に付けられる手段がさまざまに発達したこともその要因といえる。

 一方、前述したように生徒が社会に巣立つ時代にはアジア、アフリカの国々がさらに発展していることが予想できる。そこまで見据えて海外研修先を考えている学校が出てきているということだ。

 そうした点から言えば、海外研修先、研修内容から学校のセンス(視野、先見性)が見えてくるため、志望校選びの新たな判断基準にもなりそうだ。

【安田理(やすだ・おさむ)】
安田教育研究所代表。東京都出身。大手出版社にて雑誌の編集長を務めた後、教育情報プロジェクトを主宰、幅広く教育に関する調査・分析を行う。2002年に安田教育研究所を設立。教職員研修・講演・執筆・情報発信、セミナーの開催、コンサルティングなど幅広く活躍中。各種新聞・雑誌、ウエブサイトにコラムを連載中。