(英フィナンシャル・タイムズ紙 2025年3月3日付)

全米各地のテスラ販売店でマスク氏に対する抗議活動が起きている(写真は3月1日、ニューヨークの販売店で、写真:ロイター/アフロ)

 米国大統領の言動や政策を手掛かりにした「トランプ・トレード」が突然落ち目になっている。

 そのなかでも特に電気自動車(EV)大手の米テスラは際立つ。

 イーロン・マスク率いるテスラの株価は昨年11月の大統領選後につけた480ドル近い高値から2月下旬の282ドルの安値まで大きく下げた。

 下落があまりに急激だったため、退職年金の投資で計4兆ドルの資産を抱える全米教員連盟(AFT)は先日、大手資産運用会社6社(ブラックロック、バンガード、ステーストリート、Tロウ・プライス、フィデリティ、米国教職員退職年金保険組合=TIAA)にテスラへの投資ポジション(持ち高)を見直すよう呼びかけた。

テスラ車の販売が欧米各地で激減

 AFT会長のランディ・ウェインガーテンの言葉を借りると、テスラ株は「流砂にはまったサイバートラックより急速に」沈んでおり、特に欧州での販売台数が激減している。

 テスラの直近の決算報告では、昨年第4四半期に営業利益が前年同期比で23%減少し、粗利益率が1.38ポイント低下した。

 カリフォルニア州新車ディーラー協会(CNCDA)が公表した新車登録台数によると、EVの主要市場である同州でのテスラの販売台数は2024年第4四半期に前年同期比8%減少した。

 もちろん、ドイツで今年1月に報告された前年比で60%近い販売台数減少と比べると、8%の減少など何でもない。

 テスラに対する反発の一部は政治的だ。

 ナチス式の敬礼のように見えるジェスチャーは欧州の人間に評判がいいわけがなく、米教育省を解体する呼びかけも教員に受けるはずがない。

 だが、たとえマスク自身がこれほど意見を二分する存在ではなかったとしても、米JPモルガン・チェースの分析がわずか1カ月ほど前に指摘した通り、テスラの株価は「(業績などの)ファンダメンタルズから完全に切り離されていた」。

 さらに、テスラのブランドがこれほど地に落ちた理由は、もっと大きな米国株式会社の衰退と重なっている。