米国テック銘柄の例外主義の終わり
テスラの凋落は、米国株の例外主義、特にテック銘柄のそれが終わりを迎えたという感覚とかぶっている。
この感覚の一部は、中国との競争の激化(中国のディープシークの衝撃は米国の人工知能=AI=銘柄の急激な相場調整につながった)と、技術のデカップリング(分断)が必然的に米国企業を大規模な市場から締め出すという現実によって説明できる。
規制当局がマスクの自動運転ソフトウエアを承認するのに時間がかかっている中国では、テスラの販売台数が市場全体の伸びに後れを取っている。
米中関係の政治を考えると、自動運転車のような分野で広く事業を展開している米ウェイモのような競合他社をテスラが追い抜けると考えるのは難しい。
一方、国内外のライバル企業が手を組み、EVインフラにおけるテスラのリーダーシップを脅かそうとしている。
メルセデス・ベンツ、BMW、ゼネラル・モーターズ(GM)、欧州ステランティス、ホンダ、現代自動車、起亜自動車、トヨタ自動車は合弁事業「IONNA」を立ち上げた。
2030年までに北米で3万カ所の充電ステーションを建設する計画で、これが「テスラの優位性に直接的な挑戦を突きつける」とAFTは表明している。
米国自体と同じくテスラ株は「売り」
資産運用会社は果たして、テスラへの投資を再検討するよう求める労組の呼びかけに耳を貸すだろうか。そうなることを期待する。
会社を一変させると謳う野心的な事業に関するマスクの頻繁な発表(筆者自身、日本以外では人型ロボットが成功するとは思わない)には、無謀さの空気が漂う。
裁判沙汰になっている巨額の報酬パッケージは不快であると同時に不当だ。
AFTが指摘するように、JPモルガンのあるアナリストはテスラ株の目標株価を135ドルとしている。
株価がそこまで下落すれば、年初来の下げ幅は64%に達する。
そうなれば、投資家にとって重大な打撃となるだろう。筆者がテスラを格付けするなら、最近の米国そのものと同様、「売り」にする。
(文中敬称略)