コストコホールセールのクリスマス用品売り場。中央のクリスマスツリーには10万円以上の値札がついている(10月14日デンバーで、写真:AP/アフロ)
(英フィナンシャル・タイムズ紙 2025年11月14日付)
米国はかつて自国のことを、同じ大志と共通の娯楽、大衆ブランドによって結びついた中流国家と見なしていた。
今では企業が消費者を階層化することに血道を上げており、お金を極力引き出すことを目指し、「持てる者」を「持たざる者」と「ヨットを持てる者」の双方と区別している。
この事実は、かつては「すべての人がVIP」といったフレーズを使い、列を飛ばす有料サービスを避けていたディズニー・ワールドで見て取れる。
今では入場料を含まずに最大で1時間900ドルのVIPツアーを提供している。
会員制倉庫型スーパーのコストコは同社の店舗で買い物をするために年会費を徴収しているだけでなく、「エグゼクティブ会員」の高い会費を払う意思がある顧客に特別な専用買い物時間も用意している。
デルタ航空は差別化を芸術の域にまで高め、通常の空港クラブの上に「デルタワン」という名の豪華ラウンジを設けた。
同社は先月、投資家に対し、プレミアム航空券から得る収入が近くメーンキャビン(エコノミークラス)の顧客全員から得る収入を上回るようになると述べた。
深まる経済的分断、企業業績に明暗
短期的な利益の観点に立つと、この戦略は完全に理にかなっている。
米国経済は大きく分断されており、上位の富裕層が比類なき富を享受している一方、残りの人たちは家計をやりくりするのにも苦労している。
所得上位10%は今、消費支出全体のほぼ半分を占め、その割合は1990年代の3分の1から大きく上昇した。
多くの人は力強い株式市場の果実を享受し、特に豊かになったように感じている。何度か揺らぐ局面があったものの、S&P500株価指数は今年に入って15%以上も上昇した。
富裕層に入らないすべての人にとっては、現実はもっと暗い。
レイオフ(一時解雇)が急増し、消費者心理は前年比で30%低下して過去最低に近い水準まで落ち込んだ。また米国の世論調査では、4人に3人が経済はまずまずか調子が悪いと回答している。
この亀裂は企業業績に表れている。
高級ブランドの仏LVMHモエヘネシー・ルイヴィトンは第3四半期(7〜9月期)決算で米国での売上高が3%増加したと報告したが、ファストフードチェーンの米チポトレ・メキシカン・グリルは低所得層の顧客の「大幅な消費抑制」のために業績見通しを下方修正した。
ある米航空会社幹部は、勤め先が顧客を分断する明らかな「線」を特定したと筆者に話してくれた。
年間所得が22万5000ドルを超える世帯はまだ好きなように支出している一方で、それ以下の世帯は旅行にかける費用を劇的に減らしているのだという。