富裕層狙いの戦略に潜むリスク
人工知能(AI)を使って大量のデータを分析できるようになったことで、望ましい顧客――つまり裕福な顧客のこと――を特定し、具体的なオファーで彼らをターゲットにすることが格段に容易になった。
企業にしてみると、最も裕福な上位10%、もっと言えば上位1%の層に集中することが極めて魅力的になる。
アメリカン・エキスプレスとJPモルガン・チェースは最近、プレミアムクレジットカードの特典を充実させながら年会費を引き上げた。
ユナイテッド航空は、キャビアを出したり、通常座席より25%大きい座席を提供したりする上級ビジネスクラスを導入している。
だが、この戦略にはリスクが伴う。
アフォーダビリティー(価格の手頃さ)に関する懸念やインフレ、エネルギー費の高騰を受け、ニューヨーク市やバージニア州、ジョージア州で先週行われた地方選挙で民主党が軒並み勝利した。
あまり富裕ではない顧客を気にかけていないように見える企業はいとも簡単に政治的な批判の矢面に立たされるだろう。
この落とし穴の初期の兆候が先日表れた。
ドナルド・トランプが選挙での共和党の敗北を受け、特定の商品の価格を引き下げる対策を取ったのだ。
トランプはまず、数種類の人気の高い肥満症治療薬の価格を引き下げるディールを取り付けた。こうした肥満症治療薬は富裕層の間で広く利用されているが、多くの医療保険ではカバーされていない。
次に、牛肉の高さへの不満の声が上がるなか、司法省が食肉加工大手の価格カルテルについて調査を開始した。