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(英フィナンシャル・タイムズ紙 2025年10月27日付)

ベイエリアの中心に位置するスタンフォード大学(AlexによるPixabayからの画像)

 1990年代半ばのインターネット・ブームの頃から、サンフランシスコは経済的に米国全体から切り離されている。

 住宅の家賃から1人当たり経済成長率に至るまで、何もかもが全米平均をはるかに上回っているため、サンフランシスコ湾沿岸の「ベイエリア」は文字通り独自の軌道のなかに存在している。

 数週間前にサンフランシスコに降り立った時、筆者はそんなことを考えずにはいられなかった。

 今日の熱狂の原動力は消費者向けのウエブページではなく人工知能(AI)だ。だが、街の雰囲気は30年前と変わらない――1つのストーリーがあり、誰もがそれを信じ込んでいる。

街の光景は30年前と同じだが・・・

 空港から市街に移動する間に目にした広告看板は、すべてAIに関係するものだった。ハイウエイ沿いには真新しい住宅やオフィスが建ち並び、大きな白い街区をいくつも形成している。

 オフィスの窓からは、若い男性たち(シリコンバレーで働く人は今でも男性がほとんどで、それも昔と同じだ)がコンピューターに向かって一心不乱にキーボードを叩いている様子が見えた。

 壁掛けの巨大なスクリーンには、何かのスポーツの試合かビデオゲームが映し出されていた。

 ここまでは1990年代と同じだ。そこで、ふと思う。当時と今とでは果たして何が違うのだろうか――。

 米国の経済成長がいかにAIに依存しているかが明らかになってきたことで、この数カ月で盛んに取り上げられるようになった疑問だ。

 その答えのなかには簡単なものもあり、AIがもたらすインパクトは、たとえ短期的に調整があるとしても、長期的には消費者向けインターネットの台頭よりもはるかに広くて深いものになることには大半の人が同意する。

 だが、筆者は1990代と今日との間には、投資家がもっと検討するに値する比較のポイントが3つあると考えている。