(英フィナンシャル・タイムズ紙 2025年10月4・5日付)
国賓として英国を訪問した米国のドナルド・トランプ大統領をもてなす晩餐会に姿を見せたルパート・マードック氏(9月17日ウインザー城で、写真:代表撮影/ロイター/アフロ)
ルパート・マードックのメディア帝国は現在94歳の当主が死んだ時(あるいは、もしも死んだら)長男のラクランに引き継がれる。
ルパートの母は103歳まで生きたが、それは近代医学が進歩を遂げる前の話だ。
年末までに95歳でバークシャー・ハザウェイの経営の一線から退くウォーレン・バフェットは先日、「どういうわけか、90歳ぐらいになるまで私はあまり年を取らなかった」と述べている。
ジョルジオ・アルマーニは91歳で死去する数日前、本紙フィナンシャル・タイムズ(FT)に対し「私の最大の弱点は、何でも自分で管理するところだ」と語っていた。
美術館での展覧会にまで細かく指示を出していたという。
果てしなく続く大物経営者のキャリア
上記の大物たちは、映画監督のウディ・アレンが昔つぶやいた不死についてのジョークを地で行こうとしているかのようだ。
「私は同胞たちの心のなかで生き続けるなんてごめんだ。生き続けるなら自分のマンションがいい」という冗談がそれだ。
小説家としてデビューを果たしたばかりのアレン自身、来月90歳になる。
同じく90歳になるのが、自由至上主義(リバタリアニズム)の大義への資金援助でいまだに先頭を走っている富豪のチャールズ・コークだ。
コークは恐らく、リベラル派のライバルに当たるジョージ・ソロスよりも長生きしたいと願うことだろう。
ソロスはまだ92歳だった時にオープン・ソサエティ財団を息子のアレックスに引き継がせた。
幹細胞療法や血液浄化療法といったイノベーションのおかげもあり、大物経営者たちのキャリアが前例のないほど長くなっている。
この現象は、以前ならごく少数の王族だけがやったように、我々の人生を通して現役でいるような経済人の半ば永久的な権力階級の創出に寄与している。
例えばルパート・マードックは父親からオーストラリアの新聞数紙を1953年に相続し、英国のタブロイド紙「ニュース・オブ・ザ・ワールド」を買収した1969年以降、英国政界に影響力を及ぼし続けている。
こうした経営者は、要職における平均寿命が4年かそれに満たないかもしれない西側の政治家たちの大半を凌駕する存在だ。