赤字企業が買われる熱狂に歴史の韻
だが、これが1990年代と今日の比較の最も重要かもしれないポイントにつながる。
AIの過大評価が米国株式市場全体を支えているように見えるのは事実だが、それほど気にすることはないと口にする市場参加者は少なくない。
ブームの推進役であるビッグテックが莫大な利益を計上している、というのがその理由だ。
しかし、覆いを一枚めくれば、話はそこで終わらないことが分かる。
本当に重要なデータをピンポイントで見つける能力で知られる米資産運用会社アポロ・グローバル・マネジメントのチーフ・エコノミスト、トルステン・スロック氏が数日前、注目に値するチャートを提示した。
そこには、ドナルド・トランプ大統領が相互関税を打ち出した今年4月の「解放の日」以降、ラッセル2000指数に組み入れられた赤字企業の株価が同指数の黒字企業の株価をアウトパフォームしている様子が描かれていた。
米国の小型株で構成されるこの指数にはソフトウエア、バイオテクノロジー、ヘルスケアなどAI投資との関係が深いセクターの銘柄が数多く含まれている。
だが、金融やエネルギー、素材、通信などのセクターにありながら、同じようにAIの未来に賭けている銘柄も少なくない。
厄介なことに、この現象はドットコム・ブームの歴史と韻を踏んでいる。あの当時も赤字会社の株価パフォーマンスが黒字会社のそれを長い間上回っていた。