資本集約度と巨額投資の原資に大きな違い
第1に、AIは非常に資本集約的だ。
1990年代のドットコム・バブルは違った。あの当時は誰でも、資金をほとんど投じることなくホームページを立ち上げることができた。
今では、米国企業による設備投資の増加分すべてがAI関連投資で占められている。
天邪鬼な向きは、1990年代半ばからドットコム・ブームが終わるまでの間に8000万マイルを超える長さの光ファイバーケーブルが敷設され、その大半は投資を回収するのに何年もかかったと指摘するかもしれない。
確かに米国の通信会社が1996年から2001年にかけて行った設備投資は4440億ドルに上った。
それでも、この数字をマイクロソフト、アルファベット、アマゾン・ドット・コム、メタを含む大手が今年1年だけで米国でAIデータセンターとコンピューティング・インフラに費やす投資額3420億ドルと比較してみるといい。
AI開発に必要な今日の電力消費量をもとに計算すると、2030年までの投資額は7兆ドル近くに膨らむと推定される。
ここで、設備投資にからむ大事なことがもう一つ浮かび上がる。
それは、今日のAIの開発ではエネルギーが非常に重大な制約になっていることだ。1990年代にはそのような制約はなかった。
AIの電力消費効率が現在のまま推移すれば、AI投資をめぐるストーリーはさらに複雑で高コストなものになる。
電力網が今後どのように整備されるか、原子力発電所は増設されるのか、再生可能エネルギーが化石燃料に取って代わるにはあとどれぐらいかかるのか、そのような変化を背景に原油価格はどこまで上昇するのか、といったことに左右されるからだ。
第2の比較のポイントは、今のAI投資の原資がデット(負債)ではなくエクイティ(出資)によってますます供給されていることだ。
一見すると、これはとても良いことのように見える。ドットコム・バブルでは、約5000億ドルの通信関連投資の大半がデットで調達されたが、今日のAI業界の大手は巨大な黒字企業だ。
このためワールドコムやグローバル・クロッシングのような経営破綻が繰り返されることは恐らくないだろう。
いわゆる「マグニフィセント・セブン」(AIに関してはマグニフィセント・フォーかもしれない)は破綻しない。グローバル資本主義の歴史において最もリッチな企業群であり、現金をうなるほど抱えている。