中流意識が大きく後退、世代交代の時期を迎えたら・・・
問題はもう一つある。
消費者を相手にする企業のうち最も高級志向な企業でさえ、富裕層だけに訴求することで生き残ることはできない。
ある最高経営責任者(CEO)が筆者に説明してくれたように、高級品にプレミアム価格がつくのは、社会の幅広い層がそうした商品に憧れを抱くからだ。
スイスのロレックスが全米オープンのスポンサーになる時、同社は今製品を売り込んでいるだけではなく、若いテニスファンがいずれ高級腕時計を買うことを期待して、そうした若者の夢も形作っている。
だが、次第に大きくなる米国社会のセクションはもはや、この上昇志向のビジョンに組み込まれていると感じなくなっている。
自身を中流階級と描写する米国人の割合は10年前の85%から54%に低下した。米国人の40%以上は自分が下流層か労働者層だと考えており、多くの高級品は完全に手が届かないように感じていることを示唆している。
高級シャンパンの「ドン・ペリニヨン」や高級バッグの「バーキン」を今買っている消費者はいずれ年を取る。
こうした顧客の世代交代が起きた時、企業は課金型マーケティング戦略への今の依存を後悔することになるかもしれない。
(文中敬称略)