
テーマパーク再生の旗手、希代のマーケターとして知られる森岡毅氏。ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)のV字回復をはじめ、ネスタリゾート神戸(旧グリーンピア三木)や丸亀製麺の業績回復、西武ゆうえんちのリニューアルなど業界問わず成果を上げ、常にメディアの注目の的となっている。その森岡氏を2012年から追いかけ続けているのが、日経ビジネス記者の中山玲子氏だ。2024年12月に『森岡毅 必勝の法則 逆境を突破する異能集団「刀」の実像』(日経BP)を出版した中山氏に、森岡氏が率いる異能集団「刀」が結果を出し続ける秘訣(ひけつ)について聞いた。
森岡氏は「やる」と言ったことを本当に実現
──著書『森岡毅 必勝の法則 逆境を突破する異能集団「刀」の実像』では、日本を代表するマーケターの森岡氏率いる刀が手掛けるプロジェクトや同氏の組織論、リーダー論など、さまざまなテーマに触れています。今回なぜ森岡氏に着目したのでしょうか。
中山玲子氏(以下敬称略) 15年以上にわたる記者生活の中でずっと考えてきたことがあります。それは「失われた30年」といわれる日本経済をどうすれば復活させられるのか、ということです。せっかく取材をするなら、その停滞の突破に役立つ記事を世の中に出したい、という思いを持ち続けてきました。そうした記事のテーマとしてぴったりだと思ったのが、森岡氏と刀の皆さんでした。
最初に森岡氏を取材したのは、私が新聞記者時代の2012年です。東日本大震災の翌年で、今以上に経済が停滞し、日本中に閉塞(へいそく)感が漂っていました。
そんな中で、当時入場客数が大幅に低迷していたUSJの運営会社ユー・エス・ジェイのCMO(最高マーケティング責任者)だった森岡氏は、日本のゲームやアニメのコンテンツも起用して入場客数を伸ばそうと奮闘していました。しかし、映画専門のテーマパークからの脱却を狙うその戦略に新聞各紙は批判的でした。
ところが、USJは入場客数を右肩上がりで増やし続けます。「ハリー・ポッター」エリア開業前の2013年度には、2001年度の開業以来12年ぶりに来場客数1000万人の大台を突破しました。450億円もの巨額を投じて2014年にオープンしたハリー・ポッターエリアも大成功してV字回復を果たしたのです。本当に驚きました。
──中山さんをそこまで驚かせたポイントは何だったのでしょうか。