ネタニヤフ首相はトランプ前大統領と同質的な人間だとソカッチ氏は語る(写真:CNP/DPA/共同通信イメージズ)

 米上院の民主党側トップであるチャック・シューマー院内総務は、3月13日に上院で演説し、イスラエルのネタニヤフ首相について「イスラエルの最善の利益より自らの政治的延命を優先している」と批判した。

 これに対して、共和党の上院トップであるミッチ・マコネル院内総務は「アメリカが民主的に選ばれたイスラエル指導者の解任を求めるのは偽善的だ」と批判した。パレスチナとイスラエルの問題をめぐり、民主党と共和党の背後にいるロビー団体を考えると、これほど象徴的なやり取りもない。

 アメリカの中で、ことにユダヤ人においても、ハマスとイスラエルの衝突やパレスチナとイスラエルの二国家解決に対する考え方は真二つに割れている。

 今アメリカとアメリカのユダヤ人は、この状況をどう見ているのか。『イスラエル 人類史上最もやっかいな問題(日本語版)』(NHK出版)を上梓した、新イスラエル基金のCEO(最高経営責任者)ダニエル・ソカッチ氏に聞いた。(聞き手:長野光、ビデオジャーナリスト)

──ダニエルさんは、非政府組織(NGO)新イスラエル基金を運営されています。新イスラエル基金がどのような組織なのか、パレスチナとイスラエルの問題には、団体としてどういう考えをお持ちなのか、教えてください。

ダニエル・ソカッチ氏(以下、ソカッチ):新イスラエル基金は、44年の歴史を持つ、イスラエルの改革派・リベラル派を支持する最も大きな団体です。

「人権」「市民の権利」「女性の権利」「LGBTQの権利」「移民の権利」「パレスチナとイスラエルにおけるアラブ人とユダヤ人の公平性」といった概念を軸としており、イスラエルの人々に、民主主義とあらゆる人々の権利の平等を求める最大の組織です。

 パレスチナとイスラエル問題に対する私たちの考えは、双方の国の、双方の人々が「平和」「安全の保障」「自己決定権」を保持できるようになることです。そして、パレスチナが一つの国として、イスラエルの隣にあるべきだと私たちは考えます。両国の民が破壊ではなく良い架け橋を持てることを望んでいます。

──この本を読むと、第二次大戦後に自分の国を分割されたパレスチナのアラブ人たちがいかに苦しい思いをしてきたか、しかし同時に、ユダヤ人がどうしてあの地にイスラエルを建国しなければならなかったのかが伝わり、深いジレンマを感じます。パレスチナとイスラエルの関係を考えるときに、私たちはどこまで歴史を遡って、この問題の起源を考えるべきでしょうか。