米軍普天間飛行場移設のための工事が進む沖縄県名護市辺野古(写真:共同通信社)米軍普天間飛行場移設のための工事が進む沖縄県名護市辺野古(写真:共同通信社)

 台湾有事はいつ起こるのか。台湾の隣国である日本に住む人のもっぱらの関心事である。有事を口実にした自衛隊配備も着々と進んでいる。しかし、ミサイル配備が進む島の実情を知る人は少ない。例えば宮古島。ミサイルの弾薬が保管された弾薬庫は、住宅地からわずか数100メートルしか離れていない。

 米軍基地、自衛隊の部隊配備はどうなっているのか、現地の人はどのように感じているのか。『戦雲 要塞化する沖縄、島々の記録』(集英社)を上梓した映画監督でジャーナリストの三上智恵氏に話を聞いた。(聞き手:関瑶子、ライター&ビデオクリエイター)

──2022年11月末に与那国島で島民避難訓練が、2023年1月には那覇市でミサイル避難訓練が行われました。これらの訓練を、第二次世界大戦中、非戦闘員が行ったバケツリレーや竹槍訓練になぞらえて、「それこそが戦争を動かす原動力である」としています。

三上:津波に備えて、どこに逃げるか訓練しておく必要があります。これには、誰も反対しないでしょう。けれども、太平洋戦争で、バケツリレーで火を消すことはできませんでしたし、米兵を竹槍で刺したという手柄話は一つも残っていません。

 なので、バケツリレーや竹槍訓練にどのような意味があったのかを考える必要があるのです。

「空襲に備えて、バケツリレーの練習をしましょう」と国防婦人会が呼びかけた時に、バケツリレー訓練に参加しなかったらどうなるでしょう。「あの人は非国民だ」となる。

「バケツリレーなんかで空襲の火を消せるわけないじゃない」と言って村八分にされるよりも、とりあえず国防婦人会の呼びかけに応じておこうと考えた人もいたのではないでしょうか。

 夫や息子を戦場に送り出した女性たちは、銃後の守りと言って戦争を支え、訓練を行い、戦争に油を注いでいた。もちろん、当時の彼女たちには、そのような認識はなかったと思います。

 バケツリレー訓練をやってしまったら、竹槍訓練の時にはもう何も言うことはできません。「竹槍でチャーチルを刺せるわけがない」「落下傘で降りてきた米兵を竹槍で刺すなんて無理」。そういう話が、もうできなくなってしまったのです。

 そうなったのも、バケツリレー訓練の時に「とりあえずやっておこう」と思って参加してしまったからに他ならない。

 現在の沖縄だけでなく全国で行われている、ミサイルを想定した避難訓練も同様です。日本が戦争をするはずがない、と思っている日本人が、なぜ有事に備えた避難訓練に参加する必要があるのか。

 今すべきことは「戦争を止めるため」の努力です。戦争準備が進めば進むほど、戦争に加担しないことが難しくなっていきます。戦争協力しなければ、スパイ呼ばわりされたり、非国民と呼ばれて地域で生きていけないようになる。

 だからこそ、今、「住民避難訓練」が戦争協力の第一段階であることを認識する必要があるのです。それに対して、自分たちがどのように行動すべきかを考えてみてほしい。

弾道ミサイルに備えた初動対応訓練をする与那国町役場の職員(写真:共同通信社)弾道ミサイルに備えた初動対応訓練をする与那国町役場の職員(写真:共同通信社)

──2023年3月、2024年1月30日に、沖縄県は台湾有事などを想定し、先島諸島の住民や観光客、約12万人を避難させる想定の図上訓練を国や関係市町村と共同で開きました。このような動きは、沖縄県ではどのように受け止められているのでしょうか。