
大阪・関西万博が4月13日から大阪の「夢洲」で始まります。夢洲は大阪湾に造られた人工島で、読みは「ゆめしま」。1970年代にゴミの最終処分場として始まり、大阪五輪の会場としても想定されていたという歴史があります。関西以外の人には馴染の薄い「夢洲」のこれまでと、これからをやさしく解説します。
「洲」を「しま」と読む
大阪湾に面した大阪港には、3つの大きな人工島があります。廃棄物の最終処分場として1970年代に本格的な埋め立て工事が始まりました。その人工島が舞洲(まいしま)、咲洲(さきしま)、そして夢洲(ゆめしま)です。国内屈指のテーマパーク「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」の近くにあり、いずれも大阪市此花区に位置しています。
特徴的なのは、名前の読み方でしょう。
「洲」とは、「土砂が堆積して陸地のようになり、水面から出ている所」(大辞林)を指します。東京都の豊洲や福岡市の中洲のように、本来の読みは「す」。ただ、夢洲など3つの人工島はいずれも「しま」と読ませます。
この個性的な名前は1991年に決まりました。大阪港の北港北地区、北港南地区、南港地区という3地区の利用促進を図ろうと、大阪市が親しみやすい名称を公募し、約1600件の応募作の中から選ばれました。
当時の報道によると、この名称を発案したのは40代の大阪市民で、大阪港の古名・難波津(なにわず)にちなむ古歌から発想したそうです。百人一首の序歌として知られる「難波津に咲くやこの花冬ごもり今は春べと咲くやこの花」、藤原敏行朝臣の作で百人一首18番の「住江の岸による波よるさへや夢の通ひ路人めよくらむ」。

そういった歌から「咲」「夢」を選び出し、その連想から「舞」を導き出したとされています。「洲」を「しま」と読ませるのは応募者独自の発案でしたが、審査委員会でも問題にならず、人工島の名称として定着しました。
これらの3つの人工島については、大阪市が一体的に開発するとして1988年に「テクノポート大阪」基本計画を取り決めました。時代はバブル経済の全盛期。この3島を舞台として2010年ごろまでに大阪副都心を整備するという目標が示されたのです。
具体的には、①咲洲は高層ビル群を集約し、24時間稼働するビジネスゾーンに、②舞洲は最先端のスタジアムやアリーナなどを備え、年代を問わずスポーツ・レクリエーションを楽しめる空間に、③夢洲は高層マンションなど計2万戸の住宅を整備するほか、民間企業の進出を促して先端技術の拠点として整備する、という内容でした。総投資額の見込みは官民合わせて2兆2000億円。いかにもバブル期らしい壮大な構想でした。
ところが、バブル崩壊で計画は大きく狂います。