カジノ構想はうまくいく?

 夢洲を舞台としたカジノ構想が動き始めたのは、2000年代後半のことです。2009年、人工島の活性化を話し合う官民の協議会で、当時の橋下徹・大阪府知事は「コンベンション機能を強化するにはカジノが重要な視点になる」と表明。カジノ構想が動き始めました。そして、「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律」、いわゆるIR法に基づき、2023年9月に大阪IR計画が国の認可を受けました。

 IRの用地は夢洲の中央部北側で、事業主体はオリックスや日本MGMリゾーツなどが出資する「大阪IR株式会社」です。

 計画では、日本初のカジノ施設のほか、国際会議場や国際展示場、ホテル、劇場などを配置。日本では賭博罪に当たるカジノも例外的に合法になります。約5200億円と見込まれている年間売り上げの約8割はカジノによるものと予想されていますから、米国のラスベガスや韓国・済州島のようなカジノを核とした巨大な複合施設が稼働することになります。

 夢洲で始まる大阪・関西万博の会場は155ヘクタールの広さがあり、大阪IR用地の南側に位置しています。万博の開催期間は半年間で、今年10月13日までですが、その跡地はどう利用されるのでしょうか。
 
 大阪府と大阪市が公表している計画案によると、「万博の理念を継承し、国際観光拠点形成を通じて『未来社会』を実現するまちづくり」を目指すとし、用途ごとに用地を4区画に分けて開発します。

 中心となるのは「グローバルエンターテインメント・レクリエーションゾーン」で、サーキットや高級ホテル、世界最大級のプールを整備。外国人旅行者を念頭に「非日常空間」を提供するとしています。また、別のエリアでは、先端医療や生命科学に関連する施設を導入する計画です。

 大阪府の吉村洋文知事は跡地利用について、「圧倒的な非日常空間」を夢洲につくると語っています。大阪市の資料によると、2023年度までに費やされた夢洲の埋め立て事業費は約3400億円。テクノポート計画や五輪誘致に次々と失敗した夢洲は「ペンペン草が生える負の遺産。(過去に)数千億円をかけても何もできなかった」(吉村知事)場所でした。

 1990年代には有害物質のPCB(ポリ塩化ビフェニール)を含む土砂が埋め立てられていたことが発覚したことがあり、万博会場の一角では今月に入って爆発しうる濃度のメタンガスも検出されています。

 万博とカジノはこうした過去を帳消しにし、問題を解決し、夢洲を大阪・関西地区の繁栄の拠点にすることが本当にできるのでしょうか。

フロントラインプレス
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