トランプ大統領(写真:代表撮影/Abaca/アフロ)

(舛添 要一:国際政治学者)

 トランプ大統領は、4月9日、相互関税について、報復措置をとらずに協議を求めている国に対しては、90日間発動を停止すると発表した。下落していた株価は反転して急上昇したが、この唐突な発表に世界中が呆然としている。一方、中国に対しては追加関税を145%に引き上げるという。今後の展開はどうなるのか。

なぜ一時棚上げにしたのか

 これまで相互関税政策を「変更することはない」としていたトランプ大統領が、急に方針を変えたのはなぜか。

 答えは、金融マーケットの反応である。株、債券、通貨で、予想以上の悪影響が出てきたからである。世界中で株式相場が下落し、また債券市場ではアメリカ国債を売却する動きが強まった。さらには、ドル安も進んだ。トリプル安である。

 このような状況に、さすがのトランプ政権もブレーキを踏まざるをえなくなったのである。とくに米国債が売られ、金利が上昇し、財政が悪化することへの懸念が大きかったようである。下手をすると、金融危機を引き起こしかねないからである。

 さらには、世界におけるアメリカの威信とイメージが低下しており、アメリカ製品のボイコットも激しくなっている。

 ベッセント財務長官は、これから75カ国以上と交渉を進めていくというが、トランプが満足できるような結果がもたらされるかどうかは不明である。

 相互関税の90日間の停止は世界で歓迎されたが、5日に発動された一律10%の相互関税や3日から始まった自動車への25%の関税も継続されている。自動車産業をはじめ、日本への影響は計り知れない。