一方、中国は、対抗措置として、アメリカからの輸入品に84%の追加関税を課す措置を発動した。世界第一と第二の経済大国の貿易戦争が始まったのであり、世界経済は大きく収縮する。

 10日の上海為替市場では、人民元安が進み、1ドル=7.351人民元となった。当局は人民元安を容認しており、トランプ関税への対策の一つと考えられる。

保護主義は第二次世界大戦の遠因

 第二次世界大戦は、保護主義によってもたらされたと言ってもよい。

 1929年10月24日に、ウオール街で株価が大暴落し、世界は大不況に突入した。この事態に対応するため、各国が採ったのが保護主義である。

 アメリカのフーバー政権は、1930年6月にスムート・ホーリー関税法を制定した。これは、輸入品に40%前後の高関税をかけるもので、農業をはじめとする国内産業を保護するためである。ヨーロッパ諸国は報復関税を課し、その結果、世界経済はさらに悪化した。

 この関税引き上げに加えて、各国は、自国産業を保護するため、輸入数量制限、輸出補助金、為替制限、平価切り下げなどを行った。このような保護主義的政策によって、世界経済は収縮していった。

 そして、同時に世界経済のブロック化が始まった。各国は、自国と植民地の間で特恵関税を導入するなど、排他的な経済圏を形成していった。

 アメリカの他に、イギリスは、1932年に保護関税法を制定し、英連邦メンバーとスターリングポンドを基軸とするブロックを作った。フランスは、アフリカ植民などとフランのブロックを形成した。

 また、ドイツでは1933年にナチスが政権をとり、マルク・ブロックというブロック経済に走った。日本は、1932年に満州国を樹立し、アジアに円ブロック(大東亜共栄圏)を形成した。

 これが、「持てる国」イギリス、フランス、アメリカと「持たざる国」日本、ドイツ、イタリアとの対立となり、第二次世界大戦を引き起こしたのである。

 トランプは、以上のような歴史を振り返ろうとはしないし、側近の中には保護主義を信奉する者もいる。