ブラジル・ロライマ州ボア・ヴィスタの先住民ヤノマミ族が暮らす地域で行われた違法採掘取り締まりにおいて押収された金=2023年12月撮影(写真:ロイター/アフロ)
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[ロンドン発]筆者が産経新聞ロンドン支局長時代に「現代のゴールドラッシュ 陰の主役、新興国インド」という記事を書いたのは2008年2月だった。サブプライム(信用力の低い人向け)住宅ローン危機が燃え盛っていたが、リーマン・ショックが起きる7カ月前だった。

「金相場が高い。原油高騰や世界経済の先行き不透明感から旧ソ連のアフガニスタン侵攻以来28年ぶりの最高値を更新」。影の主役はIT(情報技術)で驚異的な経済成長を遂げるインド。06年8月に1キログラム=1万50ポンドだった金は当時1万5600ポンドに急騰していた。

2006年から10倍以上に暴騰した金価格

 インド系金装飾品店主は筆者に「インド文化には花嫁に金を贈る習慣がある」と語った。ヒンズー教の家庭では花嫁の父が金装飾品を買って嫁がせ、イスラム教の家庭では反対に花婿の父が花嫁に金装飾品をプレゼントする習わしだ。中産階級の拡大で金の購入量が拡大していた。

 いまドナルド・トランプ米大統領の貿易戦争、インフレ、ウクライナ戦争、中東情勢、新興国中銀による金買い増しで金価格は暴騰、一時10万4000ポンドを突破した。

 代表的な暗号資産ビットコインが過去最高値の約12万6000ドルから一時8万ドル台前半まで暴落したのと対照的だ。