胎児に将来的なIQ低下や発達障害の懸念
高濃度群では認知機能の低下、手足末端のしびれなど神経症状が多かった。胎児への影響評価では水銀による神経毒性リスクが極めて高い地域と評価された。妊婦の摂取量から計算すると、胎児は将来的な知能指数(IQ)低下や発達障害が懸念される。
急性栄養失調・マラリア・水銀汚染による神経症状が重なり、人道危機として国連でも取り上げられている。タパジョス川沿いの漁民家族の調査では髪の水銀濃度は2.9〜71.5µg/gに達していた。川沿い住民の血中水銀は都市住民より明らかに高く、魚摂取頻度と正の相関があった。
アマゾンの川沿いに住んでいて魚を主食にする人は、ほぼ例外なく水銀に慢性的にさらされている。ムンドゥルク族やヤノマミ族の領域は違法採掘の直撃でホットスポット化している。「水俣条約」により水銀輸出・輸入は「許可用途」に限定され、金採掘向けは基本的にNG。
しかし世界自然保護基金(WWF)の調査ではメキシコが中南米向けの主要な水銀供給源になっている。15年時点で、メキシコからの水銀輸出は年 300トン規模。名目上は工業用途・化学用途として輸出されるが、その多くが南米の非公式・違法採掘に流れたとされる。
国際刑事警察機構の調査では違法採掘された金は銀行・精錬所・宝飾品事業者を通じて洗浄され、年数百億ドル規模の犯罪収益を生む。不法採掘収益は世界全体で年120億~480億ドル(16年時点)、それが欧州・米国・アジアの金融システムに流れ込んでいるという。
【木村正人(きむら まさと)】
在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争 「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。





