零細・小規模金採掘が爆発的に増加

 安全資産として金の投資需要が激増、価格暴騰で採算ラインが上がり、辺境の地の小規模・不法採掘でも採算が取れるようになった。その結果、大手鉱山会社だけでなく、零細・小規模金採掘が爆発的に増えている。

ブラジル北部ロライマ州の先住民ヤノマミ族が暮らすコウト・デ・マガリャエス川沿いで、水を噴射して金を採掘する違法採掘者が摘発された=2023年12月撮影(写真:ロイター/アフロ)

 国連環境計画(UNEP)の評価では、零細・小規模金採掘による大気、水、土壌への水銀排出量は年総排出量2200トンの37%を占める(18年時点)。零細・小規模金採掘は最も多く水銀を必要とする産業であり、使用される水銀のほぼすべてが垂れ流される。

 零細・小規模金採掘が世界の金の12~15%を生産。採掘労働者1000万~1500万人のうち400万~500万人は女性と子どもだ。アマゾンやアフリカの河川・堆積鉱床は微細金が多い。水銀は金に触れた瞬間に合金(アマルガム)を形成し、微細金を逃さず取り込む。

ブラジル・パラー州イタイツーバ市クレプリザン近郊のアマゾン熱帯雨林の伐採地にある違法金採掘場で採掘者らが微細な金粒を水銀で回収していた=2017年8月撮影(写真:ロイター/アフロ)

 水銀合金は加熱すると水銀が蒸発し、金の塊だけが残る。水銀アマルガム法は汚染の原因になるが、圧倒的に安く誰でも使えるため、最貧困地域では代替手段が普及しにくい。水銀アマルガム法を置き換えていくには採掘労働者を巻き込んだボトムアップ型アプローチも不可欠だ。