
トランプ政権が発表した相互関税が世界のマーケットを揺さぶっている。欧州も20%の相互関税を課されたが、日本の24%よりも低い上に、不透明感を高める米国から逃避したマネーの受け皿になっている。果たして、今回のトランプ関税は欧州にどんな影響を与えるのだろうか。(土田 陽介:三菱UFJリサーチ&コンサルティング・副主任研究員)
米国のドナルド・ドランプ大統領の傍若無人ぶりに歯止めがかからない。
トランプ大統領が4月3日に発表した「相互関税」は、市場の予想をはるかに上回る悪い内容だった。諸賢が指摘するように、これは米国経済そのものに強い痛みを強いる内容だ。ディールを好むトランプ大統領だが、今回投げた球はあまりにも高過ぎたと言わざるを得ない。とはいえ、そうした声にトランプ大統領は耳を傾けないだろう。
ホワイトハウスで会見した際、フリップを用いて意気揚々と説明するトランプ大統領の姿は、極めて奇異に映るものだった。10%のベース関税に加えて、追加の関税で最高税率(50%)を課された地域が、北米沿岸にあるフランスの海外領土「サンピエール島・ミクロン島」と、アフリカ南部の国「レソト」だったことも衝撃的を与えた。
日本には24%の相互関税が課される。トランプ大統領の就任早々、石破茂首相は米国を訪問し、相互関税の回避を要請したが、その甲斐もなく、最悪に近いかたちで相互関税が課されることになった。
24%の算定根拠も不明だが、米メディアのポリティコ(Politico)によれば、各国に対する貿易赤字額を輸入額で割った単純な計算の結果だという。
日本に対する友好的な発言から判断して、トランプ大統領は日本に配慮すると期待されたところだが、その夢は打ち砕かれた格好だ。
他方で、欧州連合(EU)には20%の相互関税が課される。ロシア=ウクライナ情勢を巡って関係が急速に冷え込んだ米国とEUだが、そのEUに対する税率は、結果的に日本よりも4%ポイント低いものとなった。
EUと日本との間の差がポリティコの言う算定結果に基づくものなのかどうかは定かではない。ただ、トランプ大統領は個別交渉を通じ、相互関税を引き下げる意向を示している。そこに対する期待もあるが、最終的に課される相互関税がどの程度になるかが全く見えず、不透明感が強すぎるため、グローバルなマーケットクラッシュが生じている。
ここで米国が抱える貿易赤字を国別に改めて確認したい。