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 ソニー創業者・井深大(いぶか まさる)と、アップルを立ち上げたスティーブ・ジョブズ。互いの企業を世界レベルへと押し上げた2人のリーダーは、イノベーションの未来を的確に予測するたぐいまれな思考力を備えていた。本稿では『スティーブ・ジョブズと井深大 二人の“イノベーション”が世界を変えた』(豊島文雄著/ごま書房新社)から、内容の一部を抜粋・再編集。井深、ジョブズの遺訓から、これからの日本で求められるリーダー像に迫る。

 ソニーの新製品開発において、井深が重視していたプロジェクトリーダーの決め方と、最短スケジュールで成果を出すプロジェクトの進め方とは?

プロジェクトの成否は誰をリーダーに選ぶかで決まる

スティーブ・ジョブズと井深大』(ごま書房新社)

 井深は、NASAや新幹線プロジェクトの成功要因を調べるのに際し、直接訪問して持ち前の好奇心で御用聞きスタイルで相手側に当たった。そして、成功要因はメンバーの技量よりも、ほぼ100点満点の人を探し出して責任者につけたことが、最大のポイントだということが分かった。

 リーダーがメンバー全体の平均点レベルの人であれば、うまくいかない。メンバーが30点の人ばかりであっても、リーダーに100点満点の人を置けばプロジェクトは成功するということだ。

 ソニーの中央研究所の新任所長を外部から招聘したときに、研究開発担当役員の岩間氏より「研究所で新たにプロジェクトをスタートさせる時、リーダーを誰にするかは、必ず相談しろ。研究開発エンジニア能力については、人事よりも自分の方がはるかに詳しく知っているから」とアドバイスされたという。

 トップは自分の会社にいるリーダークラスの研究者の人となりについては、人事よりも詳しく知っているので、プロジェクトチームの成功確率が高くなるのだ。長たるものは、誰を責任者にするかは、人事部任せでなく、自身の仕事として果たすべきだということを井深は教えていたのだ。