2024年2月1~8日に行われた「令和5年度自衛隊統合演習(キーン・エッジ2024)」の様子(資料写真、出所:海上自衛隊 自衛艦隊

(数多 久遠:小説家・軍事評論家、元幹部自衛官)

 昨年(2024年)2月に行われた日米共同指揮所演習「キーン・エッジ」について、意図的リークと思われる報道がありました。それは以下の報道です。

<独自>台湾有事を想定、空自戦闘機が中国艦を攻撃 日米共同演習の概要判明」(2025年4月6日、産経新聞)

 産経新聞はこの記事で次のように報じていました。

<自衛隊と米軍が昨年2月に実施した日米共同指揮所演習「キーン・エッジ」で、台湾に侵攻する中国軍艦艇に対し、自衛隊機がミサイル攻撃を行う判断が下されたことなど演習の概要が6日、判明した。日米共同演習で本格的に台湾有事を想定したのは初めて。演習の結果は有事の際に自衛隊や米軍が行動する際の指針となる作戦計画に反映されているとみられる。>

 このキーン・エッジは、今までに報道された他の演習と比べると、注目すべき点の多い演習であったようです。

 台湾有事において何が起こるのか、米軍や自衛隊がどう動くのかという点に関して、非常に興味深いニュースですので、報道の内容をもう少し掘り下げてみたいと思います。

2種類の演習想定とキーン・エッジ

 通常、演習や訓練の想定には二つの種類があります。

 一つは、実際の作戦計画の検証を行い、計画のアップデートに寄与させることを念頭に置いたものです。このキーン・エッジでの想定も、これに該当します。当然ながら、このケースでは実際に生起する可能性の高い“(演習の)状況”が想定されます。

 この自衛隊用語としての“状況”は、演習想定に基づいて付与される仮想の状況のことを指します。映画などで使用されることもある「状況始め(開始)」「状況終わり(終了)」などは、この“状況”を“作戦”の意味で取り違えた誤用です。