ロサンゼルス級攻撃型原潜「ジェファーソン・シティ」の接岸作業を行う米水兵(2月11日、グアムの海軍基地で、米海軍のサイトより)

1.なぜ南西諸島間の海峡を通過するのか

 中国海軍軍艦は通常、東シナ海から西太平洋に進出するには、南西諸島の間の海峡を通過しなければならない。

 この制約は、特に潜水艦にとって大きな難関となる。

 中国軍艦が南西諸島の間の海峡を通過するには、最も広い宮古海峡を通過することが容易で安全である。

 このことから、中国の軍艦の多くはこの海峡を通過する。

 ところが、最近の中国海軍測量艦は、南西諸島間の比較的狭い海峡を選んで通峡している。

 屋久島・種子島の南のトカラ海峡の通峡は、日本の領海として設定されていることから、通過すれば領海侵犯となり、日中間の懸案事項になっている。

 測量艦の通峡の具体的な例は、以下の図のとおりである。

写真:中国測量艦

出典:防衛省統合幕僚監部プレスリリース

図1 中国測量艦の海峡通過

左:トカラ海峡の通過(2024.6.31)、右:与那国島と西表島間の通過(2024.3.22)、出典:同上

2.潜水艦の通峡に必要な情報を収集

 海軍所属の測量艦は、ソナーなどの測定機器を使って海底の地形、水中の情報、例えば、潮の流れ、うねり、海水温、塩分濃度などを調べることができる。

 大型艦の空母が通過するためには、水深などの大まかな海底の地形が判明していればよい。

 水深が浅い海峡であれば調べる必要があるが、潜水艦の通峡に必要とされるデータは、空母には必要ない。

図2 測量艦による海底地形調査のイメージ

出典:JBpress『戦争準備を急ぐ中国、日本の領空侵犯に続き領海侵犯で詳細データ収集』(2024.9.12)

 海底の地形や水中の情報が必要な艦は、潜水艦だけだ。

図3 中国の潜水艦が日本の海峡を通過するイメージ

出典:同上

 ということは、測量艦が通過している経路は、潜水艦が通る経路だと考えてよい。

 比較的狭くて通峡が難しいところで、それが可能かどうか、どのように通峡するのかなどを調査している。