日米共同訓練「キーン・ソード」で「パトリオットミサイル」を使った防空訓練(2021年11月3日三沢基地で、米陸軍のサイトより)

1.新型極超音速弾道ミサイル実験成功か?

 朝鮮中央通信によれば、「北朝鮮は1月6日、新型極超音速弾道ミサイルの実験に成功した」と発表した。発表の主な内容は以下のとおりである。

「ミサイルの飛翔の詳細については、平壌市郊外の発射場から東北方向へ発射され、その極超音速滑空体は、マッハ12で1次最高高度99.8キロ、2次最高高度42.5キロに達し、予定された飛翔軌道に沿って1500キロ飛翔して、目標想定水域に正確に着弾した」

「予想された戦闘的性能を完璧に備えたミサイルシステムの実効性が確認された」

「我々(北朝鮮)の最新型極超音速中長距離ミサイルシステムは、世界的に無視できないものであり、いかなる稠密な防御の障壁も効果的に突破して相手に甚大な軍事的打撃を加えることができる」

 北朝鮮の発表は、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領の弾道ミサイルやステルス機についての豪語に似ている。

 ウクライナ戦争でプーチン氏の嘘が見破られたのと同じように、北朝鮮についても多くの疑問が生じている。

 とはいえ、その中で誇張・欺瞞と現実を考察し、解明することが必要である。

2.北朝鮮と防衛省の発表を合わせて評価

 防衛省の発表によれば、北朝鮮は1月6日12時1分頃、1発の弾道ミサイルを北東方向に向けて発射した。

 発射された弾道ミサイルは、最高高度約100キロ程度で、約1100キロ程度飛翔し、落下したのは朝鮮半島東の日本海(図1参照)であり、詳細については日米韓で連携して分析中であるという。

図1 防衛省発表 北朝鮮のミサイル発射の方向と飛翔距離

出典:防衛省プレスリリース「北朝鮮のミサイル等関連情報」2025年1月6日

 防衛省は、飛翔速度、2次頂点高度、飛翔形態、弾着時刻については発表していない。

 防衛省の発表で飛翔距離が判明しているのであれば、弾着時刻、飛翔時間や飛翔速度も判明するはずである。

 それなのに、飛翔速度、2次高点高度、飛翔形態、弾着時刻を発表しないことには疑問が生じる。

 そこで、北朝鮮の発表と防衛省の発表の内容から、我が国への飛来の可能性とその飛翔形態について分析する。

 北朝鮮の東岸近くで南北軍事境界線の北側(例えば元山の南)からこのミサイルを発射すれば、防衛省発表の飛翔距離だと1100キロで、東京まで到達することができる。

 北朝鮮発表の距離が1500キロであり、この能力だと北朝鮮のどの地域から発射しようとも、沖縄本島の南まで到達することができる。

 北朝鮮のミサイル開発能力から考えると、1500キロまで到達させることは可能だろう。

 東京までどのように飛翔するのか。北朝鮮が発表した飛翔高度を参考にすると、飛翔形態は図2のようになる。

図2 北朝鮮極超音速滑空体の北朝鮮発表の飛翔イメージ

出典:各種情報をもとに筆者作成