3.韓国軍合同参謀本部の情報を加えた評価

 韓国合同参謀本部の発表(2025年1月7日)によると、「北朝鮮のこのような主張に対して誇張や詐欺の可能性が大きい」と強調した。

 具体的には、「北朝鮮ミサイルの飛翔距離について、韓米日分析結果1100余キロであり、弾頭部は1次最高高度に達したが、2次最高高度それ自体がなかった」と指摘した。

 昨年(2024年)4月の極超音速弾道ミサイルの実験についても、北朝鮮は「この滑空体が、1次最高高度101.1キロ、2次最高高度72.3キロ、飛翔距離1000キロ(安全を考慮して、飛翔距離を1000キロ以内に限定)であったと発表した。

 しかしながら、韓国合同参謀本部は「1次最高高度の後に水平に動き、下降する航跡だった」と分析した。

 韓国軍合同参謀本部が発表する情報の信頼性については、同じ合同参謀本部の発表であっても、文在寅大統領と尹錫悦大統領の就任期間では異なっていた。

 文在寅大統領の時期では、加工、つまり北朝鮮の軍事的脅威が意図的に低く抑えられた情報が多かった。

 尹錫悦大統領になってからは、すべて信頼できる情報が発表されていると見ている。

 その理由は、北朝鮮の軍事情勢を長期間分析している軍事専門家であれば、どの情報が正しいのか、あるいは加工されているのかは、明確に判別できるからだ。

 韓国軍合同参謀本部の発表を加えて分析すると、今回の北朝鮮のミサイルは飛翔距離1500キロは可能であり、日本のあらゆる地点に到達できる。

 ミサイルの滑空体の滑空は、1次最高高度の発表は正しいと考えられるが、2次最高高度については1次最高高度から落下して、再び上昇した高度ではなく、水平飛翔した高度のことであると考えられる。

図3 北朝鮮極超音速滑空体の現実飛翔(イメージ)

出典:各種情報をもとに筆者作成

 北朝鮮の極超音速滑空体の能力レベルは、現段階では1次最高高度から降下して、その後、再び上昇することはできない。水平を維持するのが限界である。

 とはいえ、水平飛翔したことは、飛翔軌道の変更は小さいが「できている」ということである。

 北朝鮮は、飛翔速度がマッハ12、また1次・2次の最高高度を発表しているが、一方で、韓国軍や防衛省はその2つの数値を発表していない。

 日韓とも、それらの情報収集能力を北朝鮮に解読させないために、データを公表しない可能性がある。

 2022年1月の極超音速ミサイルの実験で、韓国の「最高速度はマッハ10前後であった」という情報からすれば、今回のマッハ12(おそらく最高速度)という数値は正しいと判断できる。

 いずれにしても、北朝鮮は極超音速滑空体を搭載する弾道ミサイルの性能を最高速度12マッハ(極超音速)で、飛翔軌道を小さく変更できるという、性能レベルを一段上げたところにきた。

 日米韓は、この脅威を事実として認識する必要がある。