ソウル駅に設置されたテレビに映し出された、訪朝したロシアのアンドレイ・ベロウソフ外相と平壌で会談した金正恩総書記(11月29日、写真:ZUMA Press/アフロ)

 北朝鮮は今年(2024)10月、地下施設を2つ立て続けに公表した。そのうちの一つは、弾道ミサイルの地下施設であり、極めて異例である。

 そこは衛星では見ることができないミサイル基地の内部や関連施設だ。そこをわざわざ見せたのは、北朝鮮に大きな狙いがあるからだ。

 最初に何が見えたのかを紹介する。

 まず、見えたものの理解を深めるために、「グーグルアース」などの衛星から見える北朝鮮のミサイル基地の特色をイメージ図で紹介する。

 次に、今回北朝鮮が公開したものは基地のどの部分になるのか、通常見えない部分を見せる北朝鮮の狙いなどを考察する。

1. 北朝鮮弾道ミサイル基地の概要

 約30年間の北朝鮮弾道ミサイルの基地に関する各種情報、特に米ワシントンDCに拠点を置くNTI(Nuclear Threat Initiative)の「North Korea Profile Missile Base」(2011年)の情報をもとに、その位置を衛星画像であるグーグルアースなどで確認する。

 すると、北朝鮮の弾道ミサイルの基地や関連の軍部隊の施設が、山間部やその麓に配置されていることが分かる。

 ミサイル関連部隊(駐屯地)等から移動発射台(TEL)に搭載のミサイルが通れる道路沿いに山間部に登って行くと、道路が切れるところにトンネルがある。

 本来、トンネルの向こうには出口や道路があるはずであるが、坑内のミサイル基地にはそれらがない。

 ミサイル基地を山間部に配置しているのは、敵のミサイル攻撃から、被害を受けにくくするためである。

 トンネルがある山間部の画像を調べていくと、黒い穴が見えることがある。坑内のミサイル基地と繋がるミサイル発射口である。

 平時では、坑内(図1の①)にミサイルと運用部隊が配置されている。

 兵士が居住する駐屯地は、山間部ではなく、そこから降りてきた平地にある兵舎(図1の③)である。

 兵士はそこで居住(寝泊り、食事などの日常生活)している。兵士は通常、駐屯地で起居しており、訓練や戦争状態では、坑内の基地で働くのである。

図1 戦略ミサイル基地の概要(坑内・発射坑を横から見たイメージ)

出典:各種情報をもとに筆者作成