英フィナンシャル・タイムズ(FT)は11月16日、ウクライナの情報機関の評価を引用し、今年初めにウクライナ軍に奪われた領土の奪還を目指すロシアの取り組みを支援するため、北朝鮮がロシアに国産の「170ミリ M1989自走榴弾砲」50門と「240ミリ多連装ロケット砲システム」20基を提供、それらはクルスク州に移送されたと報じた。
この170ミリM1989自走榴弾砲(1989年確認)は、通常の火砲よりも砲身がかなり長い。
私は、30年前からこの火砲に特別な関心を持っていた。
なぜかというと、これはソウルを直接射撃できるように砲身を長くして発射威力を増大させ、射撃距離を延伸させた北朝鮮の自信作といわれているからだ。
米欧の火砲と比べても、その砲身は細くて異様なほど長い。
北朝鮮は、あらゆる機会にこの砲を大量に海岸に並べて、大きな火炎を出しながら射撃する写真を公表していた。
今回は、このような特異な火砲がウクライナ戦争に提供されることになり、この火砲と多連装砲がウクライナ軍を苦しめるのか、それとも役に立たないのかを考察する。
1.粗悪な北朝鮮の火砲でも欲しいロシア
ロシアは、ウクライナ侵攻の戦争で大量の火砲(榴弾砲・多連装砲・迫撃砲)を失った。その量は、この10月末で2万門を超えた。
ロシアは、侵攻当初では、使える火砲は約4000門であった。
その後、ウクライナ軍参謀部の発表では、現在2万門の損失があったとされている。
現有の数量よりも損失量が多いのは、屋外の砲廠(ほうしょう:火砲を置いておく場所)に野ざらしになっていた予備の火砲を整備したものと新たに製造したものを戦場に送り出した結果、2万門という量の損失が出たということだ。
ロシアはとうとう、製造している量だけでは足りず、北朝鮮の火砲まで取り込まなければならなくなった。
ウクライナとの地上戦で火力の優勢を獲得するだけの砲が不足し、砲弾を十分に発射できなくなりつつあるのだ。