台湾付近での演習に参加した中国海軍の空母「遼寧」(2019年12月25日撮影、海南島・三亜市の港に停泊中のもの、China Militaryより)

 中国の軍事力は、核・ミサイル、揚陸能力(海峡を渡洋し、上陸戦闘能力)、海空軍兵器など、その増強と近代化は著しい。

 例えば、近代的航空戦力でみると中国は日本の約5倍までになった。

 また、作戦については、米軍と西太平洋で戦うA2/AD(接近阻止/領域拒否)戦略が実行できる戦力と運用も高めている。

 中国が西太平洋正面で大きな脅威になっているのは事実である。

 しかし、軍の演習を見る限り、中国軍の発表と日中のメディアの報道には誇張があるように思える。

 大規模演習と呼ぶほどのことはない場合があるのだ。

 今回、台湾の頼清徳総統の発言に触発されて中国軍が行った演習についても、台湾を完全に取り囲んだ大規模演習であるかのように錯覚してしまっているのではないかと思うのである。

 そこで、今回の演習の実際はどうなのかについて考察する。

1.「連合利剣2024B」統合演習公表に違和感

 台湾の頼清徳総統は2024年10月10日の「双十節」(建国記念日)式典演説で、「中国には台湾を代表する権利はない」「中華人民共和国は中華民国の人々の祖国にはなり得ない」と発言した。

 台湾総統の発言に対し中国は、台湾総統の演説を「一つの中国」の原則に反する「新二国論」と位置付けて問題視し、中国軍「連合利剣2024B」統合演習を10月14日に実施した。

 たった1日の演習である。

 この演習は、5月の「2024A」に続くもので、前回は「A」、今回は「B」と呼称されるように、当初から計画されていたものだ。

 その狙いは、独立を求める「台湾独立」分離主義勢力に対する強力な抑止であり、国家主権を守り国家統一を守るために正当かつ必要な行動であるとした。

 東部戦区報道官は、「今回の演習によって台湾独立勢力を震え上がらせる」と、恫喝ともみられる発言をしている。

 また、演習区域を公表した。

 私は、この演習についてのメディア報道を見て強い違和感を覚えた。具体的には、

①中国軍が発信している演習内容は事実なのかどうかの疑問。
②提供された内容は意図的に作られている。
③日本のメディアが中国の意図を増大して発信していると感じている。

 なぜそのように感じるのかを、次に考察する。