ロシアのボストチヌイ宇宙基地を訪れ、担当者からウラジーミル・プーチン大統領とともに説明を受ける金正恩総書記(2023年9月13日、写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 北朝鮮は、①圧倒的な戦争対応能力と完全な軍事的準備態勢を整える、②兵器の開発・生産を拡充させる、③核兵器の数を幾何級数的に増やすという方針のもと、核兵器とミサイルの開発と生産を進めている。

 その一環として、各種ミサイルの発射実験を行ってきた。

 しかし、最近、北朝鮮のミサイル開発・製造の進展内容が少し違ってきている。

 それは、2023年8月以降、大量の発射装置に搭載されたミサイルを配列した写真が掲載されるようになったことで判明した。

 つまり、北朝鮮は、昨年から、「量」を生産することを重点に転換したのだ。大量生産のために北朝鮮が進めてきた実態を考察する。

1.各種ミサイル実験からミサイル大量生産へ

 特に注目されるのが次のことだ。まず、2023年8月11日と12日に、金正恩総書記は、戦術ミサイル生産工場を現地視察した。

 そして、「工場が我が軍隊の戦争準備を進める上で担っている責任が極めて重大だ」「砲弾の生産を幾何級数的に増やすことが非常に切実な問題だ」と訴えた。

写真1 20以上のミサイル発射装置とミサイル生産工場

2023年8月11・12日、出典:朝鮮中央通信2023年8月14日

 次に、2024年8月(前回視察の1年後)、軍需工業部門の各重要企業が生産した250台の新型戦術弾道ミサイル発射台を国境第一線部隊に引き渡す儀式が首都平壌で執り行われた。

 この時、軍需工業部門の労働者たちは、武力装備の増産という重大な使命感を自覚し、軍需生産の重要目標を達成したと賞賛された。

写真2 約250台の引き渡し式

2024年8月4日、出典:朝鮮中央通信2024年8月5日