約300キロの射程距離があるATACMS(2021年11月14日月撮影、米陸軍のサイトより)

1.ミサイルを撃ち漏らし多大な被害続く

 ロシアは侵攻以来、ロシア領内から、各種ミサイルや自爆型無人機で攻撃し続けている。時には、ミサイルだけで1日に100発を超える飽和攻撃を行っている。

 ウクライナは、ミサイル防衛だけで対応しており、やむを得ず撃ち漏らしもあり、多くの死傷者が出て、重要インフラ、軍事施設が破壊されている。

 ウクライナは、ロシア領内からのミサイルや自爆型無人機の攻撃を100%は止められていないのだ。

 つまり、ウクライナは、ロシアが発射するミサイル等に対して、ミサイル防衛だけで対応させられているのだ。

 いわば、3メートルの長い槍を持った敵に、お前は盾だけで戦えと言われているようなものだ。

 世界の人々はどのように思っているのだろうか。誰もが「極めて不公平だ」と言うに違いない。この状態が900日以上続いている。

 それなのに、米欧は「その現状で、持ちこたえよ、勝利せよ」と言っている。

 自国で敵地を攻撃する兵器を生産できないことが「敵の意思を止められない悲劇」になることがよく分かる戦例だ。

2.ロシア領土攻撃は容認されるのか

 現在のウクライナと米欧との交渉では、「ウクライナに提供するミサイルに、ロシアの領土を攻撃することを容認するかどうか」が、焦点となっている。

 ウクライナは、ロシア領攻撃についても「すぐ使用したい」との立場だ。当然のことだ。

 この事態が続くことに懸念を持つ英国の国防相経験者らは、巡航ミサイル「ストーム・シャドウ」のロシア領への攻撃について、「早期に使用を認めるべきだ」と、首相に要請している。

 だが、英国は、使用の際は共同開発したフランス(フランス名「スカルプ-EG」)に加え、米国の同意も得る必要があるという。

 米国のジョー・バイデン大統領は、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領との9月26日の会談で、80億ドル相当の軍事兵器と装備を送ると発表したが、ロシア領土を攻撃できるミサイルの使用を容認してはいない。