3.国境近くから撃ち込まれるミサイル
ロシア領土の地上から発射し、ウクライナを攻撃しているのは、主に弾道ミサイルと自爆型無人機である。
空中から発射しているミサイル等も大きな脅威になっているが、今回は、地上からの攻撃に焦点を当てて考察する。
ウクライナ空軍発表をもとに、ロシア領内からのミサイルと無人機による攻撃の実態(2024年8月26日から9月2日まで)を解説する。
ロシアは、8月25~26日にかけて、ミサイル102発、無人機99機による大規模攻撃を行なった。
ミサイル攻撃が1日で100発を超えたのはこれまで3回あったが、そのうちの一つである。
図1 ロシア軍のミサイルと無人機の発射位置と国境からの距離
弾道ミサイル攻撃は、「イスカンデル-M」ミサイルであり、射程400~500キロで、マッハ約6で飛翔する。
これは公表されている数値だが、発射されたミサイルがウクライナに撃墜されていることからすれば、性能は低いようだ。
このミサイルは、クルスク州とボロネジ州から発射されている。
ハルキウからこれらの2つの州までは、約200~270キロである。最大射程の400~500キロ、国境から離れて射撃しているわけではない。
射撃位置は、ウクライナの国境から300キロ以内である。
無人機の自爆攻撃に使用されているのは、イラン製の「シャヘド136」(現在はロシアで組み立てられている)であり、最大飛翔距離1800~2500キロで、時速200キロ以下である。
ミサイル攻撃と同じ日にこの無人機が発射された地域は、ロストフ州(プリモルスコ、エイスク)、クルスク州、クリミア州(チャウダ岬)からだった。
これらの地域は、ウクライナの国境あるいは現在戦っている接触線から150~320キロである。
最大飛翔距離の1800~2500キロ離れて発射してはいない。つまり、この自爆型無人機も、チャウダ岬を除けば、ウクライナの国境などから300キロ以内なのである。