12月3日22時30分、民主主義が根付いたはずの韓国で、尹錫悦大統領が突如、非常戒厳を宣言した。
その際に尹錫悦大統領が発した、国民に対する談話の激烈な語調は、耳を疑うものっだった。
「国会は犯罪者集団の巣窟だ」
「国会は自由民主主義体制を崩壊させるモンスターになった」
「破廉恥な従北反国家勢力を一挙に取り除く」
などである。とても検察総長を経て大統領になった尹錫悦氏の言葉とは思えない。
しかし最近、尹錫悦氏がよく聞いていたという極右的なユーチューバーの言葉だと思えば違和感はない。
その後の報道によれば、この非常戒厳布告は、尹錫悦大統領がごく親しい限定された側近とのみ謀って実行したもののようである。
インターネットが絶大な影響を持つ現代においては、自分と同じ意見を持つ者の声のみが増幅され、それが大勢の意見だと思い込んでしまうエコーチェンバー現象が指摘されている。
絶大な政治的権限を持つ大統領が、そのようなエコーチェンバーの中で、一部の感情的意見に呑み込まれ、過激な判断を下したのだとすれば、恐ろしいことである。
これは、保守派と進歩派が感情的にも激しい対立を繰り返してきた、韓国の特異な政治環境のゆえだという見方もある。
しかし、感情面に訴えかける政治的主張が、世論形成に大きな影響力を持つようになってきたというのは、近年世界各国で目立ってきた現象でもある。
今回の戒厳令騒ぎは、その韓国における現れだと見ることもできるだろう。それでは、世界共通のその背景としては、一体何があるのだろうか。