(堀井 六郎:昭和歌謡研究家)
国内無敵のダート王、フォーエバーヤング
新しい年を迎えて、新たな気持ちで新しい馬との出逢いを期待している競馬ファンの方も多いことでしょうが、まずは昨年11月10日「エリザベス女王杯」から8週続いたG1ラッシュに夢中だったファンのみなさんへ「お疲れさま」のねぎらいの言葉を贈ります。
私が競馬に手を染め始めた半世紀前は、11月末のジャパンカップもなければ年末のホープフルステークスもなく、師走といえばじっくりと熱燗を横に仲間と有馬記念の展開を予想したり、年の瀬を象徴する「中山大障害」を楽しんだりしたものでした。グランドマーチスとかバローネターフとか、強い障害馬がいましたね。
1999年以降は暮れも押し迫った12月29日に大井競馬場で「東京大賞典」が開催されるようになり、大掃除の進行が遅れることしばしば。「東京大賞典」が日曜日と重なる年にはJRA主催の有馬記念が1週早い12月22日に開催され、今世紀に入ってからは有馬より大賞典のほうが私にとって一年の終りを感じさせてくれるレースとなっています。
有馬記念と東京大賞典……一年の納めに中央競馬(JRA)と地方競馬(NAR)を代表する優駿たちが集結して、それぞれ芝コースとダートコース(後述)で雌雄を決するレース。いいですね。昔と違って、中央と地方の交流が進み、ダートコースのレースの注目度も劇的に高まり、毎年私の心を熱くさせてくれます。
昨年末の有馬記念では人気投票第1位のドウデュースが残念ながら出走取り消しとなりましたが、伏兵の4番人気のレガレイラが鼻差で優勝、3歳牝馬では64年ぶりの制覇となって5万人を超える中山競馬場に押し掛けた多くのファンを沸かせました。
一方、大井競馬場のダートコースで行われた東京大賞典では、本命のフォーエバーヤング(3歳、牡)が貫録の勝利。所属はJRAの矢作芳人厩舎。そう、昨年10月、パリのロンシャン競馬場で行われた凱旋門賞にシンエンペラーで果敢に挑戦した、日本を代表する国際派の調教師です。
矢作調教師の父は、かつて大井競馬場の調教師会会長を務め、昨年3月に死去した矢作和人氏であり、大井競馬場を代表するビッグレースで優勝したことはご尊父への良いご供養となったことでしょう。
フォーエバーヤングは過去9戦して7勝(すべてダートコース)、3着2回の成績を残していますが、この2回の3着は米国で行われたビッグレース、ケンタッキーダービーとブリーダーズカップ・クラシック(どちらもダートコース)でのもので、米国のトップホースたちと伍してもひけを取りませんでした。
出走したレースはすべてダートコースであるこの実力馬は、東京大賞典に際しベストのコンディションでなかったにもかかわらず、他馬を寄せ付けない見事な勝ちっぷりで国内無敵のダート王として君臨しています。