1月12日に大相撲初場所の初日を迎える。昨年は、年6場所90日間、すべて満員御礼となり、インバウンド向けのコンテンツとしても相撲人気が高まっている。今年10月には久しぶりの海外興行となるロンドン公演も控え、期待が集まるのは新たな横綱誕生だ。初場所では琴桜と豊昇龍の横綱昇進がかかっており、実現すれば55年ぶりのダブル昇進となる。
(長山 聡:大相撲ジャーナル元編集長)
フレッシュな逸材が台頭
平成6年(2024)は、ロサンゼルス・ドジャースの大谷翔平が54本塁打、59盗塁と前人未踏の「50―50」を達成し、世間の耳目を集めた。しかし大相撲界もプロ野球界同様に熱い1年だった。
春場所では新入幕の尊富士が優勝。新入幕Vは実に110年ぶりの快挙だった。翌夏場所で大の里が初土俵から所要7場所という史上最速で初賜杯を抱き、その勢いのまま秋場所後には、史上最速となる所要9場所で大関昇進を決めた。
尊富士、大の里ともにまだ大銀杏が結えず、チョンマゲでの偉業達成だったが、長い相撲の歴史で初めてのことだった。
フレッシュな逸材の台頭もあり、どの場所もチケットは完売。年6場所90日間、すべて「札止め」での満員御礼が続いた。これは「若貴ブームに沸いた平成8年以来、28年ぶりだった。
1年納めの九州場所では、千秋楽に1敗同士の琴桜と豊昇龍の両大関が優勝をかけて対峙。琴桜がはたき込みで勝利し、悲願の初優勝を果たした。場所後、日本相撲協会の諮問機関である横綱審議委員会が、両国技館で定例会合を開いた。
山内昌之委員長(東大名誉教授)は「琴桜は横綱に近い風格さえ感じた」と述べたあと、準優勝の豊昇龍にも触れ、「正統な相撲を取っている。ダブル昇進も可能性があるというか、それを願っている。私の初夢」と次の場所は、そろって綱取り場所という見解を示した。
今年の初場所でもし豊昇龍が優勝し、琴桜が準優勝という展開になれば、横綱同時昇進という可能性も十分に考えられる。
昭和末期に厳しくなった横綱昇進基準
現在に繋がる横綱制度は、寛政元年(1789)に相撲の家元・吉田司家の19世吉田追風(おいかぜ)が、谷風と小野川に横綱免許を与えた(地位は大関)ことを嚆矢とする。
その後、明治36年(1903)夏場所後に常陸山・梅ヶ谷、昭和17年(1942)夏場所後に安芸ノ海・照国、36年秋場所後に大鵬・柏戸、45年初場所後に北の富士・玉の海と、過去5組が同時に横綱の座を射止めている。
しかし、昭和末期に横綱双羽黒が不祥事を起こし、優勝未経験のままで廃業すると昇進基準が突然、厳しくなった。