訪朝したロシアのプーチン大統領を出迎えた金正恩総書記(6月19日、写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 北朝鮮がロシアに兵士を派遣したことが話題になっている。

 ロシアへの派兵には、戦死が相次ぐことによる国民の動揺や、捕虜になった兵士が外の世界を知って情報が流入するなど、国内不安定化のリスクがある。

 にもかかわらず、金正恩総書記が派兵に踏み切ったのはなぜなのか。

 北朝鮮は、このところ国民に対する思想統制を強めている。

 北朝鮮の若者が、密かに韓国ドラマを見たり、Kポップを聞いたりすることで韓国文化が流入し、韓国の実態も国民に知られてしまう。

 慢性的な食糧危機にあえぐ国民が、自国と韓国のあまりに大きな格差に気付き、現体制に対する批判が噴出することを金正恩総書記は極度に恐れている。

 今年(2024)7月には、韓国ドラマを見たとして30人以上の中学生が公開処刑されたとのニュースが報じられた。政権の焦りはそこまで達しているのである。

 今年に入って金正恩総書記は、祖父の金日成や父の金正日が一貫して掲げてきた南北統一という大義をかなぐり捨て、韓国を敵対国だと規定する方針の大転換を行った。

 それは、韓国との交流による文化流入が、現在の金正恩体制を揺るがす脅威だと深刻に認識し始めたからであろう。

 金正恩総書記は、自国の社会が揺らぎ始めていることを敏感に感じ取っている。