日米豪印の共同訓練「マラバール2023」(海上自衛隊のサイトより)

 5月10日、陸海空自衛隊の部隊を一元的に指揮する統合作戦司令部の設置を盛り込んだ自衛隊法改正案が、参院本会議で可決され、成立した。

 採決に当たっては、与党の自民・公明両党のみならず、立憲民主党、日本維新の会、国民民主党なども賛成に回った。

 これにより本年度末には、陸海空の各幕僚長と同格の自衛官たる統合作戦司令官を長とした統合作戦司令部が創設されることになる。

 可決された改正法によると、防衛大臣は、

①自衛隊法第6章に規定される行動および国賓等の輸送、
②防衛省設置法に規定された調査及び研究のうち運用に係るもの、
③その他の自衛隊の運用に関し、必要な場合に自衛隊の全部又は一部を統合作戦司令官に一部指揮させることができる。

 ①の自衛隊法第6章に規定される行動には、防衛出動、治安出動、海上警備行動、弾道ミサイル等破壊措置、災害派遣、対領空侵犯措置、在外邦人輸送、重要影響事態における米軍等への後方支援、国際緊急援助活動、国連平和維持活動(PKO)等の国際平和協力業務などが含まれる。

 ②の防衛省設置法に規定された調査および研究のうち運用に係るものとは、日本の領域およびその周辺における平素からの警戒監視活動、すなわち外国艦艇等の動向や日本領域に向けたミサイル関連活動への監視などを指すものと考えられる。

 また③のその他の自衛隊の運用とは、過去にテロ特別措置法やイラク特別措置法に基づいて、ペルシャ湾やイラクに自衛隊を派遣した時のように、他の法律によって自衛隊を運用する場合などを想定したものだろう。

 これらの際に防衛大臣が統合作戦司令官に命ずることができる「一部指揮」は耳慣れない言葉であるが、通常の指揮系統から指揮権を全面的に移すわけではなく、限られた一部の事項について通常とは異なる指揮官に指揮権を与えることを言う。

 例えば、弾道ミサイル等破壊措置にあたり、海上自衛隊のイージス艦を航空自衛隊の指揮官に指揮させる場合、全面的に指揮下に入れるわけではなく、他の点では海上自衛隊の通常の指揮系統にとどまったまま、弾道ミサイル破壊に関してのみ指揮を受けさせようとするときなどに使われる。

 これは、2006年に陸海空自衛隊の統合運用が始まった際に生み出された考え方であり、「統制」という用語に近いが、実際に作戦行動を行わせるという指揮権の重さを考慮し、「一部指揮」という用語が用いられることとなったものである。

 さてそれでは、このような権限を持つ統合作戦司令官を長とする統合作戦司令部を創設するメリットとデメリットとは何なのだろうか。