
(福島 香織:ジャーナリスト)
米国のトランプ大統領が9日、米国にとって貿易赤字が大きい国や地域を対象にした「相互関税」を発動する。このトランプ関税が世界経済にどのような影響を与えるかについては、多くのエコノミストや専門家が悲観的な意見を各メディアで発表している。
だが、チャイナウォッチャーからすると、このトランプ関税を単なる米国の貿易赤字解消を目的とした経済政策であるとか、マッキンリー関税の復活だとか、そういう経済的な意味以上に、米国の対中政策の観点では違う景色が見えてくる。
トランプ関税は、スティーブン・ミラン(トランプ政権の大統領経済諮問委員会委員長)の提言「マール・ア・ラーゴ合意」の実現を目標にしており、「経済のグローバリズムを終焉させ、重商主義に回帰しようとしている」といった分析を披露する評論家もいる。
確かに、トランプ大統領が就任演説で憧憬を語ったマッキンリー大統領の高関税政策を参考にしているなら、同政策の歴史的評価と同じように失敗することは目に見えており、貿易赤字解消どころか、米国経済を悪化させるという悲観論になる。
だが、トランプ関税の目的を中国に対する封じ込め、あるいは中国の製造業をグローバルサプライチェーンから排除し、新たな中国抜きのグローバル経済枠組みの再構築を狙っていると捉えると、そのたくらみはひょっとすると成功するかもしれない。