
(福島 香織:ジャーナリスト)
中国共産党中央は8日、中央周辺工作会議を招集した。政治局常務委員全員が出席し、習近平は重要演説をおこなって「周辺運命共同体の構築」を強く打ち出した。習近平のスローガンは「人類運命共同体の構築」が有名だが、今回は「周辺運命共同体」というフレーズが新しく打ち出された。運命を共にする相手を人類から周辺国家に変更した習近平の意図とはなにか。
トランプ相互関税発動日の9日、中国国営新華社通信は北京で中央周辺工作会議が開催され、習近平が会議に出席し重要な演説を行ったことをアナウンスした。会議は8、9日の2日間にわたり、政治局常務委員全員と、韓正国家副主席が出席した。これはちょっと不思議な会議で、これまで繰り返されてきた習近平の外交思想スローガンはほとんど語られなかった。
習近平は重要演説を行い「周辺運命共同体構築に焦点を当て、周辺工作(周辺国家、近隣国家への外交活動、工作、任務)の新局面を展開する努力をせよ」と呼び掛けた。
演説では、習近平新時代以降の中国の周辺工作の成功と経験を体系的に総括し、状況を科学的に分析し、今後の周辺工作の目標、任務、理念、イニシアティブを明確にした。
中国は伝統的に国境を接する国家とは緊張関係をはらみ、遠方の国家ほど友好的であろうとする外交スタイルを持っている。特に長い国境を接するロシアやインドとは常に緊張関係をもっていた。
実際、毛沢東はロシアやインドと紛争を起こしている。だが、習近平政権がスタートして1年目の2013年、その方向性の転換を打ち出し、ロシアとの関係が緊密化していった。
今回の習近平は、「隣国がなぜ重要なのか? 我が国は国境が長く、広大な国である。地理的位置、自然環境、相互関係のいずれにおいても、近隣諸国はわが国にとって戦略的に非常に重要である」「平和が門前にあれば、我々は安心して、しっかりと自分のことをうまくできる」「周辺は中国が背中を任せて安心を得られる場所であり、ともに発展と繁栄の基盤である」「アジアは私たちの共通の故郷であり、周辺は離れることのできない隣人である」「周辺のために成功を収めることは、私たち自身を助けることである」などと発言した。
そして「運命共同体の構築はアジアから始まる」と語り、「我らアジア、樹は共に根を張る、我らアジア、雲も手を取り合う」というおなじみの中国の歌の歌詞を引用し、「これは中国人の心の中にある素朴なアジアの運命共同体意識を反映している」と述べていた。「中国は常に周辺(近隣諸国)を外交課題の最前線に据えており、周辺の平和、安定、発展の促進を自らの責任とみなしている」とも強調した。