
2025年1月20日にトランプ大統領が就任して以降、市場は「トランプトレード」とも呼ばれるラリー相場を展開してきたが、その勢いもつかの間に急ブレーキがかかっている。本稿では、トランプ政権の政策が市場に与えている影響と、それに伴う暗号資産市場、特にビットコインの値動きについて、株式や金といった他の資産クラスと比較しながら解説する。
(松嶋 真倫:マネックス証券 暗号資産アナリスト)
トランプトレードはどこへ?ビットコインも下落
トランプ政権2.0が始まってから、政府は強硬な通商政策を次々に打ち出しており、特にカナダやメキシコ、中国など主要貿易相手国に対する大幅な関税強化策が市場の不安を呼んでいる。良くとらえればトランプ大統領の「交渉術」と言えるのだろうが、相手国の対応次第で政策内容が二転三転するなど、政策の不透明さが投資家心理を冷やしている。

このような背景から、米国では関税強化に伴うインフレ再燃や景気後退への懸念が急速に高まっており、2025年2月後半から市場の不安心理を示す指標であるVIX指数(恐怖指数)が急騰。この動きに応じて、これまで上昇基調だったS&P500やナスダック総合指数といった米主要株価指数は大幅下落し、ビットコインも同様にリスク資産として売り込まれる展開となった。
さらに暗号資産市場では、大手海外取引所Bybitで2000億円規模におよぶ不正流出事件が発生し、センチメントを一段と冷やす要因となった。また、市場が期待を寄せていた米国のビットコイン準備金に関する大統領令についても、新規購入計画が含まれなかったことで失望売りを誘発し、ビットコインはトランプラリーの上昇分をほとんど打ち消す水準まで下落した。
加えて、イーサリアム(ETH)やソラナ(SOL)、リップル(XRP)など主要アルトコインも軒並み急落し、ビットコイン以上の下げ幅を記録している。こうした中でビットコインのドミナンス(市場全体に占める時価総額割合)は約62%まで上昇し、投資家がアルトコインから資金を引き上げ、相対的にボラティリティの小さいビットコインに資金を退避させている動きが反映されている。