第2次トランプ政権の人事で注目されたのが、実業家のイーロン・マスク氏。米国の政府効率化省(DOGE)を率いて、人員削減などを強行しています。一方、足元ではマスク氏が関税政策の撤回を求めてトランプ氏に直訴したとの報道も流れ、関税政策を主導するナバロ米大統領上級顧問など政権幹部との対立も目立ち始めています。第2次トランプ政権の実態とは。経済産業省(旧通商産業省)で対米通商交渉を務めた経験を持つ明星大学教授の細川昌彦氏に聞きました。(取材日:2025年4月8日)

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「オール・ワシントン」からの脱却、カギはマスク氏の貢献

——トランプ政権は2期目ですが、1期目とはなにが違うのでしょうか。

細川昌彦・明星大学教授(以下、敬称略):前回のトランプ政権の基本的な構図は、ワシントンの外から来たトランプ大統領と、議会やシンクタンクといったワシントンのコンセンサスを作る人たち「オール・ワシントン」のせめぎ合いでした。

 例えば1期目では、オール・ワシントンの中では中国への警戒感が高まり中国の通信大手ファーウェイに対する制裁が始まっていましたが、一方でトランプ大統領は習近平国家主席とのディールで成果を急ぎファーウェイも取引材料にしようとしました。その動きにオール・ワシントンがストップをかけた。

イーロン・マスク氏(左)の巨額の資金と言動はトランプ政権に大きな影響を及ぼしている(写真:ロイター/アフロ)

 また、前政権で米通商代表部(USTR)の代表を務めたロバート・ライトハイザー氏も、オール・ワシントンの意向に従ってトランプ大統領との間でバランスを取っていました。それに対しトランプ大統領は、ライトハイザー氏にコントロールされていたと根に持っている。

 つまりトランプ大統領には、1期目はオール・ワシントンに羽交い締めにされて、自分のしたいことができなかった、という思いが強烈に残っているのです。そのため現政権ではオール・ワシントンの影響力を排除し、自分の言うことを聞く連中で周囲を固めて議会にも影響力が行き渡るようにしました。

 それを実現できたのが、イーロン・マスク氏の巨額の軍資金です。マスク氏の巨額の選挙資金により、トランプ氏に従わない共和党議員には対立候補を立てると脅すことができ、議会もトランプ氏がコントロールできるようになったわけです。

——そんなマスク氏も、そろそろ辞めるのではないかという話が出てきています。