トランプ大統領が絶大な信頼を寄せる首席補佐官のスージー・ワイルズ氏(写真:ロイター/アフロ)

(松本 方哉:ジャーナリスト)

“猛獣使い”の首席補佐官就任に「恐怖を感じていた」

「私の目標はホワイトハウス内で、世界にとって大きな決断を下す人たちを快適で幸せな気持ちにすることです」

 3月30日、FOXニュースで放送された単独インタビューでこう述べたのは、アメリカの政治史において女性初の大統領首席補佐官となったスージー・ワイルズ氏だ。独断専行で予測不能な行動に出るトランプ大統領とその周辺を政治的な勝利に持ちびくために日々を戦う、いわば“猛獣使い”である。

スージー・ワイルズ氏(写真:ロイター/アフロ)

 ワイルズ氏はインタビュー冒頭から、超大国アメリカの大統領の首席補佐官であるという重責への緊張感を隠さなかった。

「(首席補佐官を務めることに)少しも恐怖を感じなかったと言う人がいたら、人間ではありません」

 こう笑うワイルズ氏だが、「私たちはあまり時間がないと認識して仕事をスタートしました。今はまさにトランプ大統領の計画を達成するために大変な苦労をしています」と話し、トランプ2.0政権が早くも正念場を迎えていることをうかがわせる興味深いインタビューとなった。

 インタビュアーとなったのは、共和党全国委員会の共同議長を務め、トランプ大統領の次男であるエリック・トランプ氏の妻でもあるララ・トランプ氏だ。彼女はさる2月からFOXニュースで新番組のキャスターを務めている。

ララ・トランプ氏(写真:AP/アフロ)

 ララ・トランプ氏が「初めてのインタビューに感謝する」と述べると、ワイルズ氏は「最初で、おそらく唯一の私へのインタビューになると思うわ」と応じた。もちろんこれは自分がトランプ政権を辞める未来を見据えての発言ではない。ワイルズ氏は、常にトランプ氏の影に立ち、単独インタビューには一切応じないことで知られている。

 トランプ氏が大統領に返り咲いた時も、「何か一言挨拶してくれ」と促されても笑顔を見せてトランプ氏と握手しただけで、挨拶は固辞した。トランプ氏との距離の近さを記者たちに見せびらかしたがる人間が多いトランプワールドでは稀有な存在と言える。

 筆者がワイルズ氏の単独インタビューを見たのは、9年前の2016年のABC放送の単独インタビュー以来で、彼女がトランプ政権の操縦法を自らテレビカメラの前で明かすのは異例中の異例と言える。それを政権70日余りの段階で見るとは正直思ってもいなかった。