迷走続くトランプ政権(写真:ゲッティ=共同通信社)

松本 方哉:ジャーナリスト)

もはやトランプ大統領の「暴言」も国際社会に響かない

「私はこれまでロシアのウラジーミル・プーチンと非常に良好な関係を築いてきたが、彼に何かが起こったようだ」

 5月24日から25日にかけて、ロシアによるウクライナの町や都市へのミサイル・ドローンによる攻撃が相次ぎ、少なくとも12人が死亡、数十人が負傷したことを受けて、トランプ米大統領は25日、一向にウクライナ戦争を終わらせようとしないロシアのプーチン大統領への不満を繰り返し記者団にぶちまけた。そして、その数時間後にはSNSに「プーチンは完全に狂ってしまった」と書き込んだ。

 超大国とされる国の大統領が、他の国の大統領を名指しで狂人呼ばわりするのは、極めて異例のことである。ましてやその国が5580発の核弾頭を保有する世界最大の核保有国ロシアであることを考えると、深刻な異常事態である。

 だが、この出来事がさらに興味深いのは、多くのメディアや国際関係者が、このトランプ発言を事実上ほぼ無視したことだった。「トランプ大統領、プーチン大統領を狂人と指摘」という見出しの記事が国内外の主要メディアに掲載されはしたが、なんの切迫性も緊張感も、あるいは記事自体のパンチも感じられなかった。

 理由は簡単だ。トランプ大統領の発言は、もはや国際社会に響かなくなっているのだ。「どうせ、トランプはプーチンの“しもべ”だから、大した制裁の動きは取らないだろう」という反応の表れとも取れる。ことプーチン大統領の話になると打ち出しは派手だが、強気に出た後は、ぱらぱら火の粉が落ちてしぼんでしまう花火のようにしりつぼみになるのが「トランプの発言力」だと、人々は考え始めている。